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今週も辛うじて無事に終わった。
今朝、6時に目覚めたときの室温は26℃
帰宅して7時ごろに再び見ると、28℃だった。
台風が過ぎてしまうと、日中はまだ真夏の陽気。
保育所の子どもたちは「もう、プールないの?」と
聞いてくるが、発汗の少ない体質のわたしには、
朝夕はクーラーを入れる必要がなくなってきた。

月曜日にわたしがやらかした事件について、
職員会議や市の子育て支援室も巻き込んで、
事後の対策や、書類作成にまで、管理職3名が
総動員でてんてこまいの一週間だった。

従って、ただでさえ小心者で、対人不安傾向の強い
わたしが身を以って、自戒の念にも苛まれ、
毎日何度深々と頭を下げ、「申し訳ありません」と
詫びただろう。
してしまったことは、取り返しがつかないのだ。

また、今日ほどいろんな仕事を任された1日もなかった。
確かにあまりレギュラーの職員が経験しない珍しい
ポジションにいるのだ。
もう少しでいなくなる余計ものの保育士なのだから。

午前中は、遊戯室の扇風機を掃除した。
高い梯子にまたがり、枠を取り外していると
自閉のJちゃんが、興味を示して近寄ってきた。
追いかけてきたJくんの担当の半日加配の保育士と話した。
「10月になったらYさんも誘って、お茶でもしようか。」
「そうしよう。Yさんにメールで誘ってみるわ。」
大きな住宅都市でも、この町に生まれ育ったわたしには、
年々狭い世間で、行く先々の保育所で共通の知人に遭遇する
こともある。

休暇の保育士の代わりに2歳児クラスに入った。
本来は、こうした場合は主任が担当するのだが、
主任は、諸々の所長代行の事務など多忙なので、
わたしは「猫の手」にはなっているようだ。

2歳児クラスに補佐で入るのは、初めてだったが、
3歳児の発達課題である、友達同士でのモノの
共有や貸し借りのことば、トラブルなどの様子が
ほんの30分くらいで、観察できたのはラッキーだった。

新参者のわたしに、親切にお料理を作ってくれた男の子がいた。
彼は1台しかないレンジを使っていたのだが、
ココロちゃんは、あとから何も言わずに、そのレンジを
横取りしようとしたのだ。
彼はレンジを取り戻そうと、引っ張り合いになった。
それをMちゃんが仲裁に入ったのはよかったが、
Mちゃんは、小さいココロちゃんにレンジを渡してしまったから、
男の子は「わ~ん!」と泣いてしまった。
わたしは、月曜日からの実習生のMさんに苦笑いで、つぶやいた。
「濡れ衣だよね。取ったのはココロちゃんだったのに。
なんだか社会の縮図を感じるなあ・・・」

「かして」「いいよ」のやりとりが難しいジコチュウな年齢だが、
「あとでかしてあげる」「じゅんばん」
「次は、○○ちゃん」などの駆け引きや交換条件を
大人が介在し、見本を見せて繰り返すことで、クリアしていく。
普通の子どもたちは。

昼食を食べ始めると、子どもたちはケロリとそんなことは忘れている。
大人の関係もこんなふうにさらりと流せたら楽かもしれないけど。
「せんせいのおべんとうおいしそう」
わたしも一緒に食べ始めたとき、3歳児クラスに入るよう要請された。

今度は3歳のクラスで子どもたちと食べる。
「うわ、せんせいのおべんとうきゅうり入ってる。」
「そうや。食べるから見ててな。あ~ん
やったー!食べたで!」とガッツポーズ
それに、子どもたちはのってきた。
「先生、見ててな。」
「わあ、おさかな大きな口に入ったわ!」
「ほら、もうごはん全部食べたで。」
「え、もう食べたん?はやいなあ!」
他のグループよりいちごグループのみんなが
早く食べ終えて、どの子もご満悦という感じだった。

同じ遊戯室で食べていた5歳児クラスの担任が
わたしを手招きした。
「ちょっとRくんに付いて。」
加配のTさんと交代すると、床にうつ伏せていたR君は
気を取り直して着席し、再び食べだしたが、
どうも今日の献立は苦手だったらしい。
おまけに週末の精神的な疲れで彼はイライラしていた。

大人から見れば、ガラクタにしか見えないモノでも、
幼児にとっては「宝物」ということがある。
ちょっとの付き合いだけで判断はできないし、
わたしの主観にしか過ぎないのだが、
知的にはそれほど遅れを感じないRくんの課題は、
諸々の因果関係に対して普通の5~6歳の子どものようには
すんなり納得いかなくて、
3歳くらいの理解度や我慢の力に留まっていると思われた。
彼にかかわる前にちょうど3歳児のけんかに遭遇したのも
わたしには、タイムリーだった。

Rくんは、手にボールや何かを握り締めている
いわゆる同一性保持傾向もあるようだ。
ブレスレット大のワッカを何気なくポンと放り投げては、
拾ってということを無意味に数回繰り返し、
友達に当ててしまうのでは?と懸念したわたしは、
「お友達に当たりそうだから、先生もらいます。」
そこからが、バトル。
いつもの行動パターンで取り上げられたもの、
欲しいと思うものは執拗に手に入れないと気が済まない。
隠しても、逃げても追いかけてくるRくん。
担任に手渡すと、ふてくされた顔をして部屋を出た。
諦めたのかと思いきや、油断したとき、Rくんの怒りは爆発!
「他の遊びにしようよ。なにする?」
彼は、取り上げられた「宝物」のことで頭がいっぱいで、
気分の切り替えができていなかったらしい。
職員室に入るや否や、「うわ~!!」っと
ピンクの色画用紙を数枚引っ張り出し、廊下に持ち出して
撒き散らした。
この時点では、わたしは彼の行動の理由がわかっていなかった。
しかし、Rくんはわたしに抱きつきどんどん殴ったり、泣いたり
しながらも、こう訴えた。
「ぼくのたからものや。返して。」
わたしは、頭をなでで言った。
「そうか。そんなに大事なたからものやったんか。
取り上げて悪かった。でもな、お友達に投げて
怪我したらえらいことや。お友達が怪我して血が出てもいいの?」
「ダメ」
「そうやな。悪いけど、怪我したらあかんから、
Y先生に持ってもらうことにした。」
「がまんした。」
「えらかった。よくがまんしたなあ。」
「でも、返して欲しい。」
「そうか。どうしたら返してもらえるの?
返してもらったら、また友達に投げるの?」
「投げない。」
「そうやな。約束やで。Rくんの大事な宝物ポーンって
投げないよね。大事なものはどこに置くの?」
「ここ」と棚の上の籠を指した。
「わかった。じゃあ、Y先生に返してくださいって言いにいこう。」

Rくんは、いざY先生の前に来るともじもじし出した。
「言えない。先生が言って。」
「なんで?じゃあ、一緒に言おう。」
こうした気持ちの整理のへたくそさが彼にはあって、
わたしは、父の幼少時代はこんな感じだったのかと
想像してみた。

午睡前に、今日は「救急(99)の日」ということもあって
看護師のY先生が「けがをしたらどうする?」の
紙芝居に、Rくんは見入って終わったときに言った。
「血が出たら、水で流して消毒するねん。」
そして、わたしに抱きつきながら、15分ほどで寝息を立て始めた。

休憩時間に9月に交代したての加配のT先生にその経過を
報告して、今度は0歳児クラスに入った。
部屋の環境は、月曜日の事件からガラリと変わっていた。
紅一点で「クラス委員」のYちゃんが、
わたしが入室するとに~っと愛らしく微笑む。
多分、保育士のなかでは、わたしが彼女のお母さんに
イメージが近いのだろう。
7ヶ月後半のりんちゃんも、おじいちゃん、おばあちゃんに
付随するメガネをかけた他の人々をじっと見ているが、
今日もおじいちゃんが迎えにくると、足をバタバタさせて
ずり這いで近寄っていた。そのスピードは日毎に加速している。

そういうわけで、バラエティに富んだ花金が終わりを
告げようとしていた。
しかし、メインディッシュは、それからだった。

例の件で、保育所で一番小さい生後6ヶ月のYくんの
ご両親に一部始終を報告する瞬間が来た。
お母さんにはその日のうちに謝罪して事情を伝えたが、
お母さんから出張中のお父さんの耳に入ったのが2日前で、
更に詳しい説明を要請されていたのだ。
「信頼関係は築くのに時間がかかるが、崩れるのはあっという間」

お父さんは、予め用意された経過を綴る書面に目を通した。
読み終えて開口一番
「一番気になるのは、なぜベッドが歪んで空間が空いていたのか
ということですね。それがなかったら、こんなことにならなかった。
大切なのは、同じ失敗を二度と繰り返さないこれからの対策です。
何の改善もなければ、同じことが繰り返される。そうならないための
今後を万全にしてもらえるのかどうかだと思います。
それから、もし万が一の後遺症に対する長期的なケアもお願いします。今のところは元気にしているけれど、100パーセントの安心じゃないんだから。」
お父さんは、わたし個人の失態には一切追及しなかった。

主任がきめ細かく質問や意見に対して神妙に応じた。
わたしは臨席で、お父さんの目を凝視しているうち、
泪が滲んできた。

乳児室に移動し、お父さんはその瞬間をイメージしながら
しばらく無言で立っていた。
「お父さん、本当にごめんなさい。わたしがYくんを
落としました。ちゃんとベッドの柵をかけていれば、
こんなことにならなかったんです!」
「先生、頭を上げてください。いつかは誰かが起こしかねない
事故で、それがあなたとYとに起きたんです。
だから、そうした可能性をゼロに近づくべく未然に防ぐ
対応をお願いしているのです。」
そして、Yくんをそっと抱き上げお父さんは言った。
「なあY。お前ベッドでじっとしてなかったから、
みんな心配したんだぞ。」
わたしは頭を下げてクビを振った。

「無傷で済んだからといい加減だったり証拠隠滅されるんじゃ
ないかと、その方が気がかりでした。」最後にそう付け加えた。

玄関までご家族を見送り、関係者はひとまず
肩を撫で下ろした。

既に外は暗くなり、雨が降り出した。
自転車で通過した最寄り駅には
通勤から帰ってきた人々が立ち往生していた。
雨はだんだん激しく、雷まで鳴り出した。

7月1日このH保育所に初めて来た日も激しい雨だった。
最後に去る日も雨だろうか。




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