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昨夜は、テレビの映画放送で「南極物語」を見た。
1983年の作品で、随分時間がたった気もするし、ついこの前のような気もする。
作品中に夏目雅子が存命していて、荻野目慶子もすっかりオバサンになっているから、やっぱり時の流れは感じるなあ。

そういう中途半端な年代の私も、ボランティア相談員がそこそこ板についてきた。
今日は終日、午前10時から午後6時までを電話ブースのなかで過ごし、
ひっきりなしの相談に応じていた。

まずは、常連相談者から10時きっかりに立て続けに電話のベルが鳴った。
「おはようございます。」
「え・・・と、服はどこで買いますか?百貨店とか?」
「さあ、人によると思いますが?」

「禁煙して一ヶ月半になります。」
「どうやって続けてるんですか?」
「禁断症状が出てきたら、飴を舐めたり、ガムを噛んだりしています。」

正午になって、ちょっと外出させてもらい、総合福祉施設の福祉図書
コーナーに絵本を借りに行った。

こんなに安らかで居心地のいい場所(…といってもそれは私だけかもしれないけど)があることを市民の何人が知っているだろう。

「こんにちは。絵本を借りに来ました。」
「こんにちは。」
「Uさん、質問ですけどね、小学校1年生のとき、算数は得意でしたか?」
「はい。得意でした。」
「どうやって勉強しましたか?」
「プリントの宿題を家でしていました。」
「ふ~ん。私、家庭教師をしているのですが、算数をどうやって
教えようかなと思ってね。」
「・・・・」
「あ、子どものころにどんな御伽噺や昔話を読みましたか?」
「金太郎を読みました。」
「他には?」
「・・・・、こぶとりじいさん。」
「こぶとりじいさんね。なるほど、ありがとう。」

Uさんの意見を参考にTくん向けの教材を探していると、休憩時間を
済ませて、ペアの女性が戻ってきた。
お互い存在を知っていたが、女性と話をしたのは初めてだった。
「こんにちは。また来ました。」
「こんにちは。よくきていらっしゃる方ですね。」
「あら、私の声でわかりますか?そういえば、ニュースで聞いたのですが、耳の聞こえとか速聴に鋭敏になるそうですね。声がどの辺の距離から聞こえてくるのかわかるんでしょう?」
「ええ。わかります。」
「この前、家の近所の交差点で、すぐそばにポールがあって、信号が
青なのに、目の前に横断歩道を遮って、大きなダンプカーが止まっていました。危ないので白い杖の女性に声をかけたんですが、音を聞き分けて、ぶつからないように立ち止まっていらっしゃってすごいな~と思ったんです。」
「そんなことがあったんですか。」
「雨の日は聞こえ方も変わるんですってね。」
「ええ。雨の日は全然聞こえなくて、怖いですね。」
「盲導犬は使わないんですか?」
「私、イヌが怖くて、傍で吠えられたことがあるんです。」
「ああ、イヌがこわいと使えませんよね。イヌも匂いを嗅ぎ分けて
イヌが好きな人かどうかがわかるんですよね。
算数はどうやって覚えるんですか?」
「書くと、量が浮き上がってくる特殊な紙を使って、触角を頭の中で
イメージして覚えていくんです。」
「じゃあ、普通に覚えるのと同じですか?」
「そうですね。」
「ある視覚障害者の方の話を思いましましたが、色だけは想像が難しいと。」
「ええ、私も生まれつき見えませんから、話を聞いてイメージで覚えていますが、色も混ぜ合わせたり複雑なものはわかりません。子どもの頃
塗り絵をしましたが、クレヨンは持った感じではどの色も同じですから。」
「ああ、赤は血の色で、白は牛乳の色」
「ええ、想像はできます。」
「形や重さとか、長さは触ってわかるけど、色はどうしてもね。」
「そうですね。」
「どうも、ありがとうございます。」
「いいえ、また来てくださいね。」
「ええ、また来ます。ここも居心地よくて広々していていつもきれいなんですけど、初めの頃よりは、少しカーペットも傷んできてますよ。」
「はあ~、そうですか。」

自分でも気がつかなかったが、彼女は随分前から声色を聞き分けて、
私を知ってくれていたようだった。
それなのに、今日の今まで、会話しなかっただなんて。

電話相談も、顔の見えない声だけのやりとりで、どこの誰だかわからないという匿名の気軽さで、深刻な話の中にも笑いが飛び交うこともある。
「お久しぶりね。」
「はい。私の声を覚えていらっしゃいましたか?」
「ええ。1年ぶりくらいかしら。ちょっと相談したいことがあって。」

この頃は世相を反映して金銭や経済的なトラブルの話もあったり、
自分の許容量を超えた相談内容など多岐に渡ってきたが、
それも、自分自身の辛酸舐めた体験が、何となく効を奏してくる確立が
高くなってきた。

トイレに行く時間もなく、ずっと電話の向こうにひたすら耳を傾け、
自分なりのない知恵を絞って、アドバイスもしてみた。
「ここの相談員さんのアドバイスを色々試してみましたが、
タバコがやめられません。」
「どんなことを試してみたの?」
「本数を減らすとか、種類を変えるとか。」
「どうしてやめられないのかな?」
「う~ん、自分に負けちゃう。」
「そうかぁ。いくら相談員がアドバイスしても、自分でがんばろうと思わなくちゃ、負けちゃうよね。」
「はい。」
「今日は、何本吸ったの?」
「2本です。」
「あと、何本吸いますか?」
「今日はもう吸いません。」
「明日まで吸わないで我慢できますか?」
「がんばります。」
「それじゃあ、がんばって!明日まで吸わずにがんばれたら、明日また電話をください。」
「はい。」
「自分で、明日まで吸わないって決めたんだよ。自分との約束だよ。」
「はい。ありがとうございました。」

保育士という肩書きを捨てても、私の言動は、保育所の中でも外でも
あんまり変わっていなかった。

子どものころに積み残した宿題は、大人になってもチラチラと顔を出して、周囲の人々を巻き込んでいくことがよくあるような気がしている。

因みに、石切神社のベテランの占い師さんや霊媒師さんたちの話もある相談者から教えてもらったのだが、本当かどうかはさておき、子どもの頃以前の、前世から克服できなかった課題を何百年単位で人は引き摺って生まれ変わってくるのだそうだ。

…てことは、わたしの特異な緘黙も?独身を維持していることも、
神のお告げで定められているって?

そんなこと聞いたら、修論が書けないじゃないの!
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