日常の当たり前の何気ないことの中に 「あっ」というささやかな発見を一緒に 味わってくれませんか? でも、もしかすると、見過ごしている当たり前でない大発見かもしれません。
薔薇の名前
2006年05月14日 (日) | 編集 |
GWを過ぎると、しばらく土日以外の休日はない。

今週、★営業所では採用&面接ラッシュが続いていた。
4月から5月にかけてハローワーク前ですれ違う女性たちの数が増えて
天気も季節もいいから、がんばってお仕事探そうと思っているのだろうか?

週明けの月曜日、11時ごろBさんとペアになって
二人組の女性に声をかけた。
「こんにちは。あの、お仕事お探しですか?」
「ええ。」
「いいお仕事見つかりましたか?」
「いえ、探している最中です。」
「どんなお仕事を?」
「営業をしているのですが、パートなので収入は少ないです。
子どもが二人いるので、融通の利く仕事がいいのですが、
条件がなかなか整わなくて。」
「私たちは正職員として採用されたばかりですが、子育て最中の女性も
何人かいて、融通も利きますよ。
私、去年までは保育士だったから、職場でお互いに保育もしてるんです。
研修期間に自分に向いているかどうか確かめながら無理強いなんて
しませんし、私も駆け出しですけどわからないことは先輩たちに聞きながら楽しく働いています。
お子さんたちのためにも安定した職場と収入は必要でしょう?」
「はい。それが一番の条件です。」

その誘い文句に彼女たちは安心感を覚えたようだった。

3日後、★営業所にやってきて支所長の面接を受けると、
あっさり入社の意思を固めたらしい。
「NさんとOさん、入りたいって。」
「本当ですか!賑やかになりますね。」
「机の配置換えしなくちゃね。」
「くやし~い!私も採用したかった!」
「午前中の方が成功確立高そうだね。」

同僚のそういう言動にもあんまりピンとこないけど、
ゆきんこはそういう本音や思ったこと、感じたことをそのまま
素直に表現しあえる仲間に囲まれて仕事ができることが一番嬉しかった。

「おかえりなさい。Bさん契約一度に2つももらえたの?」
「そうなのよ~!お客さんがいい人だったからなんだけどね。
これ、お客さんにもらっちゃった。ゆきんこちゃんにもあげるね。」
「ありがとうBさん。おきゃくさんに宜しく仰ってください。」
「ゆきんこちゃん、この職場にきてよかったでしょう?」
「うん、Bさんがいてくれたからだよ。」
「ゆきんこさん、Bさんが好きなんだね。」
「うん。だっていつでも一生懸命なんだもの。」

上司のK所長も鬱から脱して、ニコニコ笑顔が戻ってきた。
彼女とはブログのなかの近況を話したりする。
「結局、鬱っていうのは気分の波だから誰でも落ち込んだり、
調子のいい時ってあるでしょう?
その波が大きいからしんどくなるから、調子のいいときはもの凄く
いいんだけどね。」
「その時は、ガンガン同行もお願いしますね。」
「6月は絶好調って占いにもあったよ。」
「きっと当たりますよ。調子悪いとき、私が運転変わりますから。
でも、10年以上も乗っていませんから練習しないと」
「あ、それいいね。私も空き地で練習したから付き合うよ。」

5月のように風通しのいい人間関係が、自ずと仕事へのヤル気を
強化させてくれている気がする。


夜の大学院では、まだまだそんな会話は出てこない。
新1年生の方々は5月病の兆しが見え始め、「お疲れさん」って感じの
顔をしている。

仕事柄、笑顔が板についてきた感じがするので、トビラを開けて
「こんばんは。」と入っていくと白い目で見られてしまう。
こちらでは周りの重たい空気に合わせて大人しく振舞うのが課題かも。

図書室で去年「人類と科学技術」を履修したIさんに声をかけた。
「Iさん、これよかったら参考にしてみて。」
「どうしたんですか?この資料?」
「4月に地域の教員採用試験の対策講座に参加したとき余分にもらったの。教育法規が中心だけどね。受験する気もないのに、こんなところに顔出してるの。イッチョカミでね。」
「へえ、大阪府も受けようと思っていたんです。ありがとうございます。」

水曜日の6時限目は「幼年教育思想研究」という講義を履修している。
午後7時過ぎに教室に入ると、DVDの上演が既に始まっていた。
最後列に座って、日本語の字幕スーパーが全く見えない。
おまけに修道士だけが出てくるやたらと真っ黒な映画でさっぱり
わからなかった。時折グロテスクなシーンにゾ~っとしてしまう。
一体、これが幼児さんたちや幼年教育とどんな関係があるんだろう?
授業時間内で映画鑑賞が堪能できるわけがない。

「こうした中世の時代背景を元に次回は、思想家で教育者、政治学者でもあったジョン・ロックについてお話していきます。
よかったらDVDお貸ししますので、どうぞ。」
S先生のことばかけに、早速席を立って、お借りすることにした。
「先生、DVDお借りしたいのですが。来週には必ずお返しします。」
「どうぞどうぞ。ゆっくり見てください。」
「何だか怖い映画ですけど、怖いものみたさで・・・」

タイトルは 薔薇の名前(The Name of Rose)
元祖007でお馴染みのショーン・コネリー&クリスチャン・スレーター主演で1986年と20年前の作品だ。

恐らく、だ~れも知らない異色作品だろう。

ストーリーの舞台は14世紀中世イタリアの厳格な修道院
世界史では「暗黒時代」だから、初めから終わりまで火事とか
火炙りのシーン以外は真っ黒クロスケなくら~い映画だ。
日本人で世界史に関心のある人は多くないし、宗教感覚にも疎ければ、
娯楽性を感じない歴史映画は、ヒットしないだろう。

宗教裁判が激化している中世のヨーロッパで、
イタリアの修道院での会議にイギリスのウィリアム(ショーン・コネリー)と、見習いのアドソ(クリスチャン・スレーター)が参加していた。そこで不審な死を遂げた若い修道士の死の真相解明を任された二人が謎を探るうちに、連続殺人が巻き起こっていく。

「セブンズ・イン・チベット」の名匠ジャン・ジャック・アノー監督による中世の雰囲気を存分に醸しだす、謎に満ちたゴシック・サスペンスの傑作!

ウィリアム&アドソは、さながらホームズ&ワトソンコンビの探偵物語
と捉えると、ちょっとは気軽になるかもしれない。

現職の教職員がこの映画から何を読み取るのかが夜の学校に於いては
お題になる。

時の絶大な権力を握っていたのが、中世の僧侶たちだったが、
その権威が正義なのか否かは誰が決めるのか?

謎の真相は、封印された古典がぎっしりと詰められているヒミツの
修道院の図書室に隠されていた。
そこには、古代ローマやギリシア時代の名著や哲学者の教え、
アリストテレスの喜劇などが自由奔放に描かれ、宗教家たちを非難する内容のものもあったのだ。

それを解明しようとするものは、不実の罪を期せられるか、
男性を惑わす魅力的な肉体美を持つ女性を魔女として、
拷問にかけ、火炙りにするということが宗教裁判の異端審問員によって
公然と不当に行なわれていた。

これをパラドキシカルにそのまんま見ていると
「どっちが邪悪やねん?」
「何が正しいねん?」
と突っ込みたくなってくる。

暗黒時代、ゆきんこが大好きな笑いや喜劇も、
笑っただけで、魔女扱い火炙りになってしまう。
ひょっとして、緘黙症であることがフツウの時代だったのかも。

DVDのいいところは、外国語が好きな人は、何ヶ国語かのリスニングが
楽しめるし、
原作者や監督の撮影シーンや裏舞台のエピソードなども鑑賞できること。
異端扱いを受けた知的障害のある修道士のメイクや、
溺死シーンの細かい演出、ドリンクを片手に休憩するスタッフ
ショーン・コネリーの賛美歌の練習シーン
そして、画面には決して出てこない監督の素顔。

映画化に至るまでに、
原作者ウンベルト・エーコの中世のイメージが、歴史推理小説という言語に置き換えられ、それを読んだ監督が、脚本にして、映像としてイメージ化される。
実際に、原作者が映像化された作品を目の当たりにすると、
そこには、監督の間接的なイメージが内在化されているため、
100%原作者のイメージ通りの作品には仕立てあがっていない。

ゆきんこは、教育・保育畑でいつもこれと同じ縮図を垣間見ていた。
大人(親)と子ども、教師と生徒、健常者と障害者という関係性は、
特権階級と民衆、つまり支配-服従という関係性を免れ得ないものなのだと。

しかし、ウィリアムは同僚に反駁した。
「笑いは邪悪なものでしょうか?
他の動物は笑いません。笑うのは人間だけです。」

両者の垣根を越えられるのは、環境によっては「共に笑える」ってことじゃないでしょうか?








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2006/05/14 14:44 | 鑑賞 | Comment (2) Trackback (0) | Top▲
コメント
この記事へのコメント
私もDVDのメイキング映像を観るのが好きです。
どんな雰囲気からその映画が作り出されたのか、覗き見るような気分になります。また映画も違って見えてきますよね。

我が子の通う塾で過去に幼稚園教諭をしていた先生がいます。彼女の考えている教育と上司のそれとがかなり食い違い、大変苦労されたと話を聞きました。若く、新しい意見は押しつぶされる・・・そう感じました。彼女は自分なりの教育をしたくて塾を開いたように思えます。いつ見ても教室内は笑顔に満ち溢れています。
2006/05/14(日) 22:22:17 | URL | 野ウサギ。 #-[ 編集]
笑える塾でよかったですね。
野ウサギ。ちゃんご自身の体験そのものが、現行の教育システムに疑問や不信感を持ち続けてこられたことと思いますが、
「果たしてこれでいいのか?」と教える側にも同じ疑問が生じてきたとき、その先生が成されるケースも少なくありません。
子どもたちの笑顔が絶えない塾経営が維持できますように。
自己実現された先生が羨ましいなあ~!
2006/05/21(日) 14:42:55 | URL | ゆきんこ #-[ 編集]
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