日常の当たり前の何気ないことの中に 「あっ」というささやかな発見を一緒に 味わってくれませんか? でも、もしかすると、見過ごしている当たり前でない大発見かもしれません。
過去と未来の拮抗
2006年05月29日 (月) | 編集 |
思いかけず、2月に保険会社に入社することになって早5月もそろそろ終わりに近づいている。

毎月曜日は大学院でABAのF先生のゼミにゼミ生もどきになっているのだが、今日は先生の都合でお休みのため、6時半にはBさんの代わりに掃除当番を買って交代して、6時半には帰宅できた。
母と二人で夕食が食べられた平日は実に久しぶり。
だって、夕食はいつも電車のなかで朝お弁当と共に作ったおにぎりや
お菓子をほおばっているのだから。

会社では毎週毎週締め切り日が決められている上に、支社からの上司の
上司クラスの方々が入れ替わり立ち代わり突如お出ましになっては、
常に挙績やら、採用やらとハッパをかけてくる。

そんな追い立てられるムードに徐々に慣れてきたものの
まだまだ元来ののんびりのほほん振りの素人感覚でいられるのは、
いつも気配りと思いやりを絶やさず、心優しく自己犠牲を払うことを
厭わないS支所長の便宜のお陰である。

「ゆきんこちゃん、11月には支部に昇格しないといけないの。
チカラを貸してね!」
「はい。私もS支所長に部長になってもらいたいです!」
単なる利害関係だけでは心からがんばろうというヤル気になんて
結びつかない。

★営業所の同僚のなかでも、「純粋無垢」な印象をキープしている
ゆきんことしては、反対に「不器用?」とか「マイペース」とも
言われていてもそれを「受容」してくれている仲間関係に支えられているところが相変わらず大きい。

金曜日の夜。
「支所長、来月重要月なんですよね。」
「そうよ。がんばろうね。ゆきんこちゃんも○活してくれたらなんとか
目標達成できると思うわ。」
「そうですか・・・来週は所用で土曜日出勤できないのですが、
明日、出勤しましょうか?」
「そう?午前中はお客さんの予約があるから午後1時から取り掛かろうか?」
「はい。宜しく御願いします。」

翌日27日の土曜日も6~7名の営業員が出勤して設計書のプリントアウトをしていた。
「こんにちは。」
「土曜日もご苦労様。それじゃ、端末立ち上げて。」
「はい。」
I町に在住の契約者リストを片手に設計書を作り直した。
担当地区のI町には60数名の顧客がいらっしゃるのだが、
そのうち10余名分を作成するだけでも実に3時間以上もかかってしまった。
そして出かけたのは午後4時過ぎ。

同行の車中で、ハンドルを握る支所長に恐る恐るリクエストした。
「支所長、今日は何時ごろ終わりそうですか?」
「ああ、何時がいいの?」
「実は仕事が終わったら、友人と会う約束をしてまして。」
「いいよ。何時にする?」
「6時ごろには電車に乗りたいです。」
「わかった。後は私がやっとくから。」
「え?支所長が!?」
「うん。」
「いいんですか?申し訳ないです。。。。
あの~、、、我侭ついでにもうひとつ御願いが」
「なあに?」
「まだ入社したばかりで恐縮ですが、休暇をいただけますか?」
「いいよ。遠慮しないで休暇はちゃんと20日あるんだから。
寧ろきちんと使った方がいいくらい。」
「そうですか!ありがとうございます。これから友人と旅行の計画を
立てるつもりなんです。」
「私も休みとって旅行したいな~。でも、責任あるしね。」
「他の所長から聞いたんですが、支所長が会社の大抜擢を受けて
昇格されたのには、随分葛藤がおありだったそうですね。」
「責任重くなってしんどいだけだもの。給与だって据え置きだしね。
でも、チャンスをもらって引き受けたからには、がんばらなくちゃって
思ってるの。」

いつも笑顔を気配りと思いやりを絶やさず、
損得勘定なしにひたむきに仕事に徹する上司がなんだか眩しい。

3軒の契約者のお宅に提案書を持参して、後は上司にお任せで
夜7時過ぎ、Oちゃんのコンドミニアムに到着した。
「こんばんは~。」
「お疲れさま。」

K百貨店の地下で買い出してきた「中食」を半分こしてまずは
腹ごしらえ。

「私はさあ、折角夏休みだし、パスポートの期限が切れないうちに
海外行きたいな~。国内はいつでもいけるし、ダイビングもだんだん
できなくなりそうでしょう?3年前のケアンズよかったよね。
あそこまで贅沢は無理だけど、そんなに遠くなくて、お手ごろ価格で
英語圏のリゾートで、まだ行ったことないところ・・・
で思いついたのが、グアムかサイパン」
「私はそのイメージじゃなかったなぁ。うわぁ!夏休みは10万円近くも
するじゃない。」
「じゃあ、どこに行きたいの?」
「そうだな~、、、世界遺産とか見たい。」

メールでも事前に希望の行き先や旅行先で何を楽しみたいのか
伝えていたが、お互い忙しいのはわかっていたけど、
たったの2人とはいえ、日時・行き先・予算・旅行の目的の4つを
話し合うだけでも、思いのほか時間がかかってしまった。
どちらかが或いは何かの条件を妥協しない限りは、
理想どおりの旅行ってなかなか難しいものだ。

それくらい旅も人生も多種多様。
パンフレットとネット情報の数が増えれば増えるほど、あれこれと迷ってしまうし、時間だけが刻々と経過して気がつくと深夜になっていた。

「グアムとサイパンってどう違うの?」
「もしも申し込めなかったときに予算内で国内旅行も考えよう。」
とりあえず、グアムか北海道に行き先は決まった。
あとは、週明けに心優しい上司に希望日ドンピシャリの休暇の許可を
「うん、いいよ。」と言ってもらうだけだ。

予定外の日曜日の正午帰り。
午前8時起床とはいえ、脳ミソが呆け呆け状態のまま
電車に揺られて考えた。

出不精のOちゃんから珍しく旅行の誘いに、2つ返事で応じたものの、
(大の旅好きの為)
大学院の研究と、独居老人の父を故郷に連れ帰るという課題も
お座なりになっていることが頭を過ぎった。

H駅に着くとまずは電話相談室に顔を出した。
「スミマセン・・・昨夜のうちに帰宅できなくて母に当番を代わって
もらいました。」
正午から午後2時まで、後半4時間を担当する相談員の方と交代するまで
パンフレットを見比べているうち、徐々に脳ミソは覚醒していった。

午後2時半から4時までGWに中途半端に片付けられなかった
ジャングル状態の自室から2005年の秋・冬に訪れた美山町の資料探し。

それから、4時過ぎから本腰を入れて宿題の先行研究の検索に3時間近く取り組むのに扱ぎつけた。
H大学付属図書館にアクセスして、辿り着いたのは日本各学会のHP一覧
そこから「日本発達心理学会」会報の論文目録に辿り着いた。
ああ、ありがたやPCくん。

いくらビンボウと言っても、PCもなく、英語の基礎レベルに
ゆきんこが到達していなかったら、
多くの出会いと別れの遍歴と情報の取捨選択の果てに、
今、ここ、この瞬間がなかったら、

そこでわかったのは、
「緘黙症」はやはりお座なりのニッチ(隙間)な研究対象であること
動物と人間のかかわりで論文を書いている研究者の発見!

あ~、眠くなってきちゃった。

週明けの月曜日の午後12時半から1時半まで
ハローワークの前に佇む私にニヤニヤ顔で近づく既知の女性と
2名出遭った。
「あなた、S園で一緒だったわね。」
「あ、I…さんでしたね。」
「Sさんって知ってる?」
「支所長と知り合いなんですか?」
「子供同士がクラスの同級生なの。」
「それじゃあ、以前この仕事を?」
「もう10年以上も前に、2~3年くらいね。」
「私がご一緒してから、1年間はS園にお勤めだったんですね。」
「ええ。でも、もう保育士はしないわ。」
「疲れたでしょう。ゆっくりしてください。」
「うん。がんばってね。」
意味深な笑顔を浮かべてIさんはバイクで走り去った。

今度は、2005年の夏、H保育所でアルバイト仲間だったT先生だ。
「久しぶり。髪が伸びたんだね。」
「ゆきんこさんも、お仕事かわったんですね。」
「うん。T先生が保育士以外の仕事もやったことがあるって言ってたでしょう?ずっと保育士しかしてこなかったから、あなたのことばが
とても参考になったの。ずっとバイトで何回もハローワークに来るのもイヤだったし。
今は、正職員にしてもらって楽しくやってるの。
あれから、Rくんはどうなった??」
「Rくんは、いろいろ不安を残して卒園しました。」
「そう。学校に入学してどうしてるかな? また保育士に登録するの?」
「う~ん、、、ちょっと考えます。」
「気が向いたら寄ってみて。」
Tさんも笑顔でチラシを受け取り去っていった。

TさんもIさんもH市内の障害児加配の保育士の経験の結果、
失業して再び同業に戻ることに躊躇っていることは一目瞭然だった。
それは、正しく6ヶ月前の打ちひしがれた私自身の姿そのものだった。

自閉症の専門施設になりつつあるのに、誰もABAを知らないS施設の実態や、「エジソンのお箸」を使っていたRくんのこと、検索していた先行研究論文とが、
私の過去と未来のなかでグルグルとかき混ぜられて方向性を見失っているような感じだ。

私の自閉症道は常に曲がりくねって屈折していた。





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2006/05/29 21:58 | お仕事 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
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