雨の自営業2

日本人は忘れている。
湯水のように使える水があるから、毎日ザブザブお風呂に入り、
流し水で食器洗いができるってこと。

家の中で「腐っている」と言っている人は忘れている。
冷蔵庫には世界各国から集められた食べ物があり、ありとあらゆる電化製品に囲まれ、衣食住の心配しないでそこにいられるってこと。

午後4時前
自転車でハローワークに向かう途中、3日前の黄昏時に観察していた同じ公園を通過した瞬間、見覚えのある男性の後姿に視線は釘付けになった。

その男性は会社の一社員で、誰が呼んだかジャイアンというニックネーム。
週に1~2回★営業所巡回してくると、
入社ほやほやのゆきんこの隣に腰掛け、雑談をしてくることが常となっていた。
もうすぐ好々爺になるだろうスマイル付き。

初めはよくわからなかったので、お互い様にアイスコーヒーを片手に
雑談していた。

数週間前、スーパー事務員のFさんが進言してくれた。
「ゆきんこちゃん、あの人にいちいちお愛想しなくてもいいのよ。
暇つぶしにあなたみたいな気のいい人を止まり木にして、仕事の邪魔をしているようなものなんだから。」

その一言で「いい人なんだけど…」のジャイアン氏のイメージが一変した。

そういえば、社内で何の仕事をしているのかさっぱりわからない人なんである。
彼は、今日の午後も★営業所にやってきた。
Fさんの進言に従い、この頃ジャイアン氏のお相手を律儀にするのを控えて、仕事に従じることにした。
「お仕事お疲れ様です!」
ジャイアン氏は特にどの営業員とも話すわけでもなく、何か所用が
あるわけでもなく、出されたお茶を飲んでしばらくすると去っていった。

それから30分も経過していなかっただろうか。
再び公園でジャイアン氏を目にしたのは。

「ジャイアンさ~ん」と呼んでみたが、彼は文庫本に没頭し、
私の声に無反応だった。

午後5時過ぎ、2往復して軽く息を切らせて営業所に戻って、Nさんの仕事に同行した。午後は、今にも降りだしそうな曇り空だったが、
Nさんの白い車に乗り込んで、今日3度目の営業に出かける途中、
雨は本降りになった。
ガレキのなかで火傷しながら作業している同い年の男性に再び会うためだ。
Nさんの勧誘にSさんは「ごめん。はいらない。」とシャットアウトした。
「Sさん、りんごのふるさと青森の出身ですってね。」
「そうだけど、りんごよりにんにくのほうが有名なんだ。」
「そうですか。お盆は帰省されたんですか?故郷のお母さんに今日電話してあげてくださいね。」
同い年のSさんは一瞬たじろいだ。
「私の父も雪国の出身なんです。もう73歳でしょう。わけあって父は
故郷に帰れない身の上なんですけど、この頃は祖母に似た私の顔を見て
泣いてつれて帰って欲しいって言ってくるんです。私もこの仕事忙しすぎて、父を連れて帰る時間がないんですよ。今日は父のことも、私を待っている方々のことも後回しにして、Nさんがどうしても一緒に来て欲しいというので、雨の中こうしてお話にきました。Sさんにとって損だと思う話なら、私、わざわざこんなことしません。」
雨は、タオルを巻いたSさんの頭をしとしと濡らした。

こんな保険の提案話ってあるかしら???

「Nさん、私ジャイアンさんを見たわ。公園で本を読んでた。」
「あんな人いくらでもゴロゴロしてるわよ。この業界は。」
「がっかりしたなあ・・・私たち入ったばかりの営業力も儘ならない
女性たちがアクセクと何度も何度も御客さんのところに足を運んでいるのに、何してるんだろうと思ってヤル気が一気に失せたよ。」
「そうまでしてする仕事じゃないのよ。でも私は今、自分の営業力でどれだけおきゃくさまたちの信用を得られるのか勝負しているの。」
「すごいわね~。私、入社してNさんに会えたことは感謝してるよ。」
「本当だね。私もゆきんこちゃんが隣にいると、どんどんヤル気になるのよ。癒し系で自然体だもんね。」
「ふ~ん。癒し系はよく言われるけど。横にいて特に何にもしてないのに?」
「ゆきんこちゃんはサボらないで毎日地道にがんばってるじゃない。」
「う・・ん。今日もゴールデンウィーク前に一回だけ話したMさんに
久しぶりに会って、『あの時の約束、覚えていらっしゃいますか?』
と尋ねてみたら、『うん、覚えてるよ。今度は持ってくるね』と言ってくれたの。」
「そうなんだ。ちゃんと進んでるじゃない。」
「でも、どうやったらすんなり辞められるかなと思っているよ。
Bさんが勧誘してくださったという以外には、仕事内容に魅力を感じないもの。
それにしても、Nさん次の仕事は鯛焼きやなんて本気!?」
「フフフ・・・旦那のアイデアなのよ。」
「鯛焼き1日100個売るって言うの?他の職種はどうなの?」
「さあ?ゆきんこちゃんが独身でよかったよ。仕事を辞めても友だちでいてね。鈴鹿サーキット行こう。海外旅行も一緒に行こう!」

昨日も今日もNさんをすっかりアッシーちゃんにしていたけど、
Nさんはなぜかゆきんこの隣でいつもルンルンだった。








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コメント

今日もお疲れ様~!v-275

小林さん、ありがとうございます。

はい。今日も8時まで残業でしたが、、、
なかなか結果を出せないですね~。
上司は尊敬できる素敵な方々なので、
凹んでも、またがんばります。

 お仕事大変そうですね。今日もお疲れ様。

もし、どうしてもしんどくなって現実逃避!?したい時があったら、ファームステイ、いつでもどうぞ。
 でも急に言われても受け入れ態勢も悪いし、お給料も払えるかどうかわかりませんけど、それでもよければいつでもどうぞ。
 あと、その時は家内と仲良くしてくださいね(笑)あっはっは~自意識過剰、認識不足?

その時はどうぞ宜しく。

小林さんの奥様のブログにも出没していいでしょうか?
勿論、ネチケットやルール違反しないように気をつけますので、お手柔らかに御願いします。

月額15万円の補助で農業経営の支援システムがあるとテレビ番組でちょこっと報道していました。

はい、もちろんどうぞ。

月額15万円?どんなシステムだろ?調べてみます。
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