県境を越えて

週明けも、実働(まずは、とにかく契約を1件挙げること)していない
肩身のせま~い★営業所の朝9時。

今日のプレゼンテーションはゆきんこの当番
「3連休も営業されていた方、リフレッシュされた方もあると思います。私も土日は仕事をしていたのですが、まだ実働もできなくて申し訳なく思っています。昨夜は、敬老の日に因んで、介護のドラマをしていました。(原作:介護と恋愛)
遥 洋子さんが婚約と同時に父親の介護をすることになり、
介護を優先した彼女は、婚約者に別れを告げて介護に専念することになりました。2~3年後、父親の葬儀に現れた彼が再び、結婚指輪を彼女に提示し、プロポーズを申し込みますが、彼女は言いました。
『私はあなたのご両親の介護をするわ。あなたは私の母のオムツを替えてくれる?』
バスに乗り込んで返事に窮した彼が窓越しに叫びました。
『オムツを換えることが結婚なのか!?』
『そうよ!結婚はオムツを換えることなのよ!』
私は今日、この話をネタに提案したいと思います。」

しかし、約束していたMさんは、また行方がわからなくて、代わりに
野球青年のK氏に聞いてもらった。
毎朝、提案の練習をしているのに、本番になると自分から墓穴を掘る有様。
「え~と、Kさんとてもお若いのですが、保険年齢としては、実はそうでもないので、保険料も高いです。でも、なんとか安く作ってみました。」
「あんたは、正直だね~。どうして保険の仕事に?」
「いや、こんなに大変だとわかってたら入らないですよ。もう辞めたいとまで思ってる今日この頃。」
「あんたに合う仕事なんだろうなぁ。ずっと見てるけど心配だから、
他の就職先、考えてあげるよ。」
「え!本当ですか?」

などと言う会話をしているだなんて★営業所ではとてもとても言えない。

昼食を済ませて、うだうだと端末で事務処理をしていると何となく
午後からの訪問に行きたくなくなってきた。
そのうち4時過ぎに、★営業所のアイドルYちゃん(4歳)が幼稚園から戻ってくると、
「ゆきんこさん、ちょっと見ててな。」
と、後ろ向きにボールを籠に投げ入れることを繰り返す。
「さすがYちゃん、すご~い!」
「さすがって?」
「あ、さすがって難しいか・・・えっと、スゴイによく似た別のことば」
「ふ~ん。」
「籠に入ったら10点ね。」
ホワイトボードに⑩と書くと、Yちゃんは、
「Y、数字書けるもん。」
今度は、数唱の練習だ。どんどん調子にのって
「30、31、32、33・・・」
するとO所長から横槍が入った。
「ゆきんこちゃん、仕事して!」
「はい。4階行ってきます。Yちゃん一緒に行く?」
「うん。」
今度はYちゃんのママ
「Y、ダメ!ゆきんこさんの邪魔しちゃ。」

5時過ぎにお客さんに電話で予約を入れてそろそろ帰ろうと思った頃だった。
「あ~、今から奈良行かなくちゃ。」
「奈良?今から!」
「うん。一人で行くのいやだなぁ~。ゆきんこちゃん、ついてきてくれる?」
「いいけど、私でいいの?」
「ホントに一緒に来てくれるの!?」
「いいよ。行くだけでいいなら。自分の提案先はなんだか行きたくないんだ。」
「よかった~!ありがとう!」

Nさんは、またもやルンルンと楽しそうに振舞った。
午後6時過ぎ、退勤のサインを済ませて、Nさんの白い車に乗った。
自分のお客さんじゃなければ、助手席に乗って随分お気楽モードになった。半分はNさんと夜のドライブだ。

1時間あまりで奈良市内に入り、お客さんと待ち合わせのトマト&オニオンというレストランで待ち合わせた。
恰幅のいいお相手は、職業的にも年齢的にも体格的にもギリギリセーフで契約を取り交わすことができた。

注:保険はどなたでも加入できない。加入を希望したおきゃくさんでも、条件の範疇にないと申し込みできない場合がある。
例えば、極端な肥満、危険度の高い職業、40歳以上などでは、
診査士の診査を受けたり、医師の診察をクリアしないと加入したくとも
できないという告知義務がある。

お客さんは、彼女同伴でやってきたが、どうやら些か険悪ムード。
聞けば、彼女は元同業者で保険の世界の表裏を多少知っているだけに、今回の契約に賛成していなかったらしい。
Nさんは、既に取り交わして同意を得た提案書をお相手に渡していたので
持っていなかったが、再度、チラシの裏面に設計図を描いて丁寧に彼女に解説した。
しかし、彼女も食い下がって、わざわざ新規に契約し直して、出費が嵩むことを心配していたようだ。

そこで、保険の知識ではNさんの何歩も遅れているゆきんこが口を挟んだ。
「私たちも、わからないことはどんどん質問してもらった方がありがたいんです。本当に納得して契約してもらわないと、結婚と同じで後々、
約束が違うとか、トラブルが生じるとよくありませんから。」
「そう、私もN社にいたからわかるのよ。お客にはいいことしか言わないでしょう?」
「そうですね。敢えて悪いことも初めにお伝えしておけば、あとから誤解もありませんよね。」
「家計が苦しくなったらいつだって解約してもいいですよ。でも、彼の
現状では今を逃がしたら、同じ条件でこの保障額は今後は難しいと思います。」

ゆきんこのバカ正直が、彼女の表情を和らげたらしい。
保険業界の辛酸を舐めた者同士という微かな共感がお互いに涌いたのか
彼女は保険内容からフランクにわが社の内情について次々と質問してきた。
「N社では、『生きる力』っていう主力保険商品発売したよね。」
「へえ、そんなの出てるの?」
「うん、医療保障は充実してるけど、死亡保障が少ないの。」
「お給料いくら?」
「14万円。でも査定クリアしないと減俸だし、販促品に諸経費全部自己負担。」
「へえ~、少ないじゃない。」
「そう。そんなに儲からないよ。今月入ってくれて本当にありがとう!」
「勉強も大変でしょう?私、研修についていけなかったんだ。」
「うん。もう大変。明日も朝から研修だよ。」

彼女が我々に抱いていた警戒心は概ね解けたようで、最後には、車に待たせていた愛犬を見せてくれた。黒いダックスは尻尾をフリフリ飼い主を迎えた。
「けんかしないで、仲良くね!」
Nさんは二人にそう言い放って、それぞれの車に乗り込んだ。

「今日はありがとう~!ゆきんこちゃんには感謝感謝だよ。」
「感謝しすぎだよ。辞められなくなっちゃうじゃない。」
「そんなに辞めたいの?」
「だって私、どうやらS支所長に他の営業員よりも贔屓され過ぎてるよ。それに、前職の障碍児業界を中途半端に終わらせたという後ろめたさもある。」
「でも、この仕事だって楽しんでるじゃない。提案だってしてるし、今日の話が上手くまとまったのも、ゆきんこちゃんの後押しがあったからだよ。私の話だけじゃ、彼女は納得しなかったと思うよ。商品が同じなら、あとは営業員がどれだけ信用できるのかで、お客さんは最終的に判断するんだから。
S支所長だって、ゆきんこちゃんを見込んでるから大目にみてくださってるんじゃないの?」
「あ~!!だからそれが堪らないんじゃない。いっそのこと、冷たくされてそのまま去った方が、気が楽だよ。厳しいノルマに追い立てられて他のことや学業と両立できるのかも心配なんだよ。今のところは、支所長やNさんが私を必要としてくれるからいるけどね。」
「★営業所はどうやら他と比べてもいいメンバー揃ってるから、
目先のことよりも長期展望で期待されているのも、本当みたいだね。
私もキツイけど、もう少し一緒にがんばろうよ。」
「うん・・・Nさんが私を必要だと言ってくれるうちはね。」

こうして、父の誕生日に電話もできずに、おやすみなさいの時間です。







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コメント

今日もお疲れ様~!ゆきんこさんも大事な☆営業所のメンバーですよ。無理しないで頑張ってね!自然体でそのままで、きっと全幅の信頼を置いてくださるお客様が現れますよ。私なんかが無責任なこと言えませんけど・・・(大和)

小林さん、いつも応援してくださって心強いです。ありがとうございます。
あんまり仕事のことをブログにしたくないものの、やってることをありのままに綴るしかないものですから。
本当はとっとと査定落ちして小林さんちにファームステイしたいんですけどねぇ・・・
自然体で、無理しないで明日もがんばります。

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遥洋子

遥洋子遙 洋子(はるか ようこ)は、大阪府大阪市出身のタレント、作家、フェミニスト。「遙洋子」と表記。「遙」と「遥」は検索で区別されることに要注意。経歴武庫川女子大学|武庫川女子短期大学を卒業。1986年から読売テレビの番組『ときめきタイムリ