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秋の気配

ブログの開設3年目を迎えたが、相変わらずの不人気と、大学院修士課程3年目に入っても尚、人生の紆余曲折が持続していることから、精神的健康を維持しているのがやっとこさだ。

9月になって窓から聞こえてきた蝉の音がぱたりと途絶え、夕方には宙を蜻蛉が舞う姿を発見するようになった。
2年前の9月にも、私は公立保育所で勤務する日々をカウントダウンしつつ、
H保育所の子どもたちに癒されていた。

確か7月の半ばに、10年も務めたN市長の逮捕の報道がされ、間もなくH市長選挙
が行われると母から電話で聞いた。

今なら、年々伸び伸びした保育ができなくなり、親しく優しかったベテランの保育士たちが相次いでリストラされていったアンラッキーな時代をアルバイトの非正規雇用保育士として過ごしてきた。 

それに比べたら、猛暑のなかを自転車営業で厳しいノルマに耐えていた昨夏と比べても、この新天地は文字通りの新天地といいたいが・・・

新しく採用された専門学校の学科主任の上司は、ゆきんこにやっぱり厳しい。
週末の金曜日の夕方、キャリアセンターというガラズ越しの部屋に呼び出しを受けた。

こういう場面設定では、ゆきんこの場合、自然、恐怖心に襲われ、涙ぐんでうわずった声になってしまう。

「ゆきんこ先生、どういうつもりなんですか?そろそろ半年になりますが、あなたのことを職員は好感をもっていないと聞いています。
今年は修士論文を書くということで、私たちも譲歩していますが、あなたが
修士課程まで進学され、児童福祉の分野で当校に貢献してくださるという期待をかけて採用したのに・・・・。あなたにはそれだけ年下のW先生の仕事振りと比べても、あなたの方が年上なんだからもっと気を利かせられないんですか?
W先生が今、2年生クラスでどんなに大変なのかわかっているのですか?
8月のスクーリングだって、かばん持ちの仕事くらいしたらどうなんですか?」

「私も初めてのことで、気が聞かなかったのは、申し訳なく思っています。
でも、W先生にお手伝いがあれば、遠慮なく雑用でも何でも仰って欲しいと
何度言っても、独りで抱え込んでしまっているようです。
今日も、薬を飲んでいらっしゃいましたし・・・」

「あなたが、年上だから言いにくいに決まっているでしょう。私たちの職務は
先回りして、学生の進路をお膳立て、レールを敷く仕事です。周囲のスタッフは
ゆきんこ先生が、さぼって何してるんだろうと噂しているのですよ。
教鞭を取るのが無理なら、事務の手伝いをしていただいても、大事な原稿が封筒に紛れていたと聞いています。このことは、事務のスタッフに丁重にもう一度
謝ってください。これから後期に入ってあなたがどのように振舞うのか、よく考えてみてください。最終的には、私が全ての責任を負わなければなりません。
煮え湯を飲まされたことだってあるんですから・・・」

専任教員の若手2名は若干26歳のW先生と27歳のT先生。
お行儀があんまりよろしくないキャピキャピギャルと、
まだまだ反抗期進行中の20歳前後の学生100名近くを一手に指導しているのだ。
私が彼らよりも一回りも上でそれなりの履歴?を携えている割には、
(だから、人間はレジュメでなんか単純に推し量れないのだ)
「でくの坊」なのか、どう思っているのか、土日も返上でバタバタしている彼らの横で、私の業務といえば、今のところ電話の取次ぎと職務に関する自主机上学習くらいだった。

二人とも臨床心理士だの、精神衛生保健士だの、心理学のエキスパートとして修業しているのなら、どうしてもっとオープンに接してくれないのだろう・・・
年上だの、キャリアがどうだの、男女の別なくどうしてコンプレックスを取り払って素直にコラボレーションしてくれないんだろう?
どうして直接、私のことを咎めずに、間接的に上司に言うのだろう?
これってかなり「迂遠的ないじめ」に近くないだろうか?

夕暮れのワンちゃんたちを散歩させるご近所さんたちを横目に、自転車を押して上り坂をとぼとぼと歩いていた。

同じ居住区内の母と同い年の女性が、買い物籠を押して歩いている途中、挨拶した。
「こんばんは。今からお出かけですか?」
「そこのスーパーに買い物にね。あるいて5分で便利だよ。私は足の具合が悪いから、駅前のスーパーは遠いし、高いでしょう。」
「私、買い物はいつも駅前まで出かけていました。そんなに近くにあるんですか?」
「すぐそこよ。店主さんが親切で、いつも安くしてくれるの。それに直接仕入れているから、安くて品がいいのよ。」
「今から一緒に行ってもいいですか?」
「どうぞどうぞ。」

道中、ちょっとしたカウンセリングになった。
「さっき、上司に叱られたものですから、ちょっと落ち込んでいました。」
「どうして?」
「新しい業務でまだまだ迷惑をかけていて、前任者の穴埋めを期待されていたのに、上司は期待はずれだと思っているようです。私は気が弱いし、今の仕事もあんまり向いていないかもと思っています。」
「あなたはいい人よ。私は人間ウォッチングが好きでね。今は昔と違って、
人間関係もややこしい。あなたは素直すぎて、腹の底をうまく隠して生きていけないのね。人間、生涯に心からつながっている関係は2~3人で十分ですよ。
都会の人間は田舎とちがって落ち着きがないから、変な人も増えているでしょう。」
「今の上司に気に入られず、仕事も分不相応なら、年老いた母を独りにして心配なので、故郷へ帰ろうと思っています。」
「とにかく、どんなことがあっても腹を立てないことね。それから、人間なんとでもなるものですよ。あなたのペースでいきなさいよ。」

紹介してくれたH商店さんは寂れた昔ながらの小さなぼろっちい個人商店、元祖
コンビニエンスストアだ。
20代半ばのT先生やW先生は昼休みも十分とらずに駅前のマクドナルドのハンバーガーをかっ食らっている。

個人商店のおっちゃんは、ドタバタと即席栽培された一見エリートはだしの若者よりも、皺と白髪から滲み出るような素朴さと、優しさ、気前のよさを風貌に湛えていた。
「これ、お食べ。」
Hさんはよもぎもちをくれた。
「え?駅前のスーパーやったら、こんなサービスないわ。いいんですか?」
「ええから。」
「うわ、案内してもらって得したわ。お客さんにこんなことしてたら儲からないでしょ?」
「トマトも魚もおいしいよ。」

駅前の大型スーパーでは、大勢の人々が黙々と買い物している。
商品も溢れているのに、なぜだか味気ないし、コミュニケーションもない。
いつも、日曜日の夕方は駅前まで出かけていた。
今日の夕方はまた、Hのおっちゃんのところへリピーターになろうと思う。















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