イヌは友を呼ぶ!

バレンタインデーの翌日。2月15日、午後7時。
誰よりも出没頻度が高かっただろう夜間大学院の図書室で、指導教官のY先生と待ち合わせ。

「先生、こんばんは。」
「ちゃんと、訂正できたかな?」
「はい・・・試験官の両先生にご指摘のあったところは修正しましたし、30回くらいは見直しました・・・」

しかし、実のところ何回も否になるほど、見つかった誤字・脱字。

今回で3作目。
9年に1度の頻度で書いてきた論文。
そもそも、私の試行回路に論理的思考などないにもかかわらず、よくやったな~と
「書き上げたことそのものに意義アリ」で自己満足。。。

12日~14日には最後の集中講義「大人と子どもの発達心理学」を履修していたのだけど、論文の訂正を3連休に集約できなかったのと、
その3日間は日本国中、雪の嵐に見舞われるという天気予報に挫けて欠席することにした。
4日間ひきこもって、論文を仕上げた。

13日には、再び印刷と製本も済ませたお陰で、バレンタインでーには
Pさんにチョコレートを渡すことができた。

翌朝、電話があってまだ20代半ばという若い証券マンが自宅にやってきた。
学生時代はアイスホッケー選手としてクラブ活動を楽しんでいたという社会人4年目のM氏は、投資銘柄を見せて提案にやってきた。
「とにかく、よきに計らってください。」

去年までしがない保険募集人だったゆきんこ。
もう金融関係者とはスパッと縁を切ったとはいえ、お金を介した人と人とのおつきあいに、どうしても不信感が拭いきれない。

チンパンジーの世界でも、長老のお墨付きを得た若いオスリーダーが、
現リーダーの地位を覆すという内部紛争や、革命沙汰はヒトの社会と何ら変わることはない。
その高すぎる知能の故に、ヒトはチンパンジーよりも遥かに進化し、
ことばとお金を巧みに操るようになり、ついにはウソにウソを重ねるようになった・・・

でも、イヌとの関係にはウソはない・・・と必死に信じたいのだ。
そして、イヌを観察するうち、どうしてイヌなら笑って赦せるのだという場面に遭遇するのだ。笑顔と共に。

証券マンのM氏に「今から論文を提出に行くのですが、ついでに駅まで送ってもらっても構いませんか?」
と厚かましくお抱え運転手になってもらい、次の目的地へと向かった。

午後1時過ぎ。
着いたところは、1年前によく出没していた元町駅。
Sさんと待ち合わせて、まずはランチ・バイキングへ出かけた。

金融機関だろうと、チンパンジーの世界だろうと、そしてアカデミックな世界だろうと、世渡り上手が出世上手というのが、社会性動物の掟だ。
Sさんとの詳しい会話内容は、保身のために割愛するが、一見ユートピアに見えてもちょっとでもドロドロ~っとした目には見えにくい陰謀が渦巻く世界というのは、霊長類に生まれたからには「無人島」で自給自足する覚悟でもしない限り、きっとないのかな~などと思ってしまう。

わたしの場合、純然たる何かを追い求めようとすれば、必ず追放されてきた。

「ねえ、レオに会いに来る?」
「うん!是非是非!9日にアムロが死んじゃった!飼い主のIさんから電話があって電話の向こうで泣いてたよ。私も、実家に戻ってから口頭試問の準備していたらアムロに会いに行くのが後回しになってしまったんだ。」

バスで移動し、Sさんのお母さんが営む花屋さんへ立ち寄った。
「レオ!」
レオに会うのは、たったの3回目だ。
レオは前足を私のお腹につけて顔を覗き込みと
「ワンワンワン!!」と吠えた。
「どうしたん!?」
「喜んでいるみたいよ。」
「覚えてるのかな?前に会ったのは去年の7月だよ。」
「覚えてるって!」

随分、私のことを信用しているんだね、レオ?
世の中、結構みんな信頼し合うのが難しいんですよ。

それから、Sさん宅にしばしお邪魔すると、
レオは飼い主のSさんの言うことは無視しているが、
私の傍らにピッタリくっついて、じっと見つめている。
照れるんだな~・・・そんなにまじまじと見つめられると・・・
そして、ついに私の唇を奪ってしまった。
鼻の下から顎までベロベロに嘗め回されてしまった。

赤ちゃんのことから死ぬまでつきあってきたアムロには、
「アムロ、舐めない、舐めない!」
と頑なにキスを赦したりしなかったのに・・・

何と若干4歳でまだ出会って3回目のレオに、私は・・・

なんていう表現をしたら卑猥だからやめとこ。
しかし、レオが愛すべき対象は、私だけではないことがわかった。

「そろそろ、学校へ行くね。レオ、久しぶりに会えて嬉しかったよ。
また会おうね。」
バス停までの道中に、レオは真っ直ぐ歩いていかない。
いろんな見ず知らずの通行人に自分からどんどん寄って行くのだ。

唖然

それでも、大抵の人のリアクションはまんざらでもない。
レオは最初からイヌ嫌いのヒトには寄っていかないから、寄っていけば
笑ったり、なでたりしてもらえることをわかっていて寄り道、いや寄りヒトをしているのだ。

そして、クライマックスには、レオは行きつけの理髪店の自動ドアを率先して通過し、店内に入った。

オーナーさんが接客中でないのがチャンス!
オーナーさんに突進し、おやつをオネダリし始めた。
「はいはい。」
オーナーさんは笑顔で、ソーセージを振舞ってくれた。
レオが遠慮なくガツガツとソーセージにパクついているのに、理容師さんの愛犬パグのナナちゃんは、遠慮がちになかなか食べようとしない。

「ちょっと~、レオ!?いつもこんな感じですか?」
「そうねぇ。」
「え~!そんなの人間では赦されないよ。
 レオ、世渡り上手だな~・・・ったく。ナナちゃんより厚かましいんだから」

それで、レオの歓迎振りにちょっと冷静になった。
アムロもそうだけど、飼い主と相思相愛のイヌは、
道を行き交う他のヒトやイヌにも遍く愛想がいいのではないか?

ゆきんこもイヌを観察するうち、イヌに涎を垂らすようになり、
そのうち、イヌが勝手に近付いてくることが増えてきた。
そして、アムロやレオと会えたので、アムロやレオに新しい友達を紹介してもらうことも増えてきた。

ヒトのヒトとの関係には行動の事前事後に何らかのメリットが必要かもしれない。
でも、イヌの場合はオネダリ行動も何かズル賢さがないところが、ついつい口元をほころばせてくれる。

週明けの今日の午前も、証券マンのM氏が上司と自宅へ再訪した。
「先日の説明ですけどね、母にも同意を得ないといけないんですが、
あの説明では『ハ?』で終わりです。いくら説明してもらっても細かいことはわかりませんから。要は信頼関係で、よきに計らってくださればそれでいいんですから。」
「ハハハハハ!」

M氏の屈託のない笑いが、レオが尻尾を振る様とほぼ同等のノンバーバルコミュニケーションであることを祈るとしよう。




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テーマ : こんな日常 - ジャンル : 日記

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