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2008/08/31 (Sun) ひとりよがり

昨日、自宅を出発して約2時間。
午前10時30分半年振りにJR神戸線に乗り、はじめての駅で降車した。
昨年通ったハーバーランドを通過して、須磨浦の海を眺めた。
不思議と水面をみているだけで少し穏やかになった。

さて、「穏やかになる」のは脳内でどんな科学変容が起こっているのだろう?
JR東加古川駅に降り立つと、ほんわかした町のムードが漂ってきた。
改札口には最寄の大学のオープンキャンパスの案内看板が表示してあった。

バスターミナルで専用マイクロバスに乗り込むと、恥ずかしながら浮いている自分を感じつつ平静を装った。
他の乗客は、キャピキャピの現役コギャル。
乗ること10分で大学の入り口に到着した。
「受付でアンケートに記入してください。」
「あの、受験生ではないのですが、こちらの専任講師の方が知人で、ご案内いただきました。」
「そうですか。では、よろしければ講義棟までご案内します。」

いつもなら気さくに何か話しかけようとオバタリアン根性を出してみるのだけど、
昨日の続きで凹んでいるので男子学生の後を無言で追随した。

「ゆきんこさん!?」
「K先生!!」
「まあ、よく来てくださいました。おひとり?」
「はい。昨日までバタバタしていて結局お誘いできませんでした。」
「遠いところ、来てくださって嬉しいです。2号館の2階なんだけど、今教材の準備中なの。」
「では、そちらでお待ちしています。」

この3月まで教職員大学院で親しくしていたK先生が、修了後H大学の講師に就任された。
オープンキャンパスの公開体験授業を担当することになり、昨日ご招待いただいた。
演題は「生命のサインをとらえる -脈拍・体温・血圧-
受験を志望してやってきた高校生から一般向けにやさしくわかりやすい実習だ。

実際に体温計・指先での脈拍のとり方・血圧の測定を実習した。
いずれも身近な計測物だけど、講義室となると改めて新鮮な気持ちで体験できた。
K先生のお弟子さんがアシスタントでペアになってくださった。

特に血圧計は、いつもはクリニックで手早く看護師さんに測定してもらうのが常だけど、
自分で相手の腕を測定するともたついていた。(だから、不器用)
女学生さんの聴診器を通して心臓の鼓動の音がドクドクドク聞こえた。
その鼓動の音と脈拍計の水銀が小刻みにリンクして上下に揺れた。
「へぇ・・・心臓の音ってこんな音ですか。生きている音って不思議ですね。」

ゆきんこのワーク☆での5ヶ月間は終わっても、私の心臓が動いている限り、
こうしてK先生に再会することもできれば、ブログにその出来事を綴り、
誰かに伝えて、わかってもらうことができる。
ありがたいことだ。

「どうだったかしら・・・ちょっと初めてで緊張しましたが。」
「いえ、先生とても落ち着いた口調でわかりやすかったです。それに、身近な問題なのにとても新鮮でした。楽しかったです。」
この大学の卒業生で現役養護教諭(保健室の先生)がK先生に近づき、挨拶を交わした。
娘さんはまだ中学生だが、御母さんと同じ職業を夢見て将来受験される決意をしたそうだ。

今時の若い人たちもしっかりしているのだなあ。
ゆきんこの場合、中学時代には、心理学を専攻し悩んでいる人の相談に乗りたいと思っていた。
それから、彼女たちの御母さん世代になってみて自分の半生を振り返ると、あたらずとも遠からずという周辺をうろうろ彷徨って、閉ざされた門の前でジタバタしてきた気がする。

心理学を学びたい。
それは幸せに寄与する科学だという憧れがあったからだ。
どうして泣いてばかりきたのか、
どうして父は働かず家でガラクタばかり作って時間を潰しているのか
母の留守には目の色を変えて私を竹の棒で叩くのか
私は誰もいない部屋で一人で泣き、母の帰宅までには平静にしていた。

悲しい過去を穿り出して自己憐憫に浸る時間を無益だとこれまで何度も自分を奮い立たせてきた。

「それじゃあ、お部屋へどうぞ。」
研究棟の非常階段をかけあがり、K先生は研究室へ案内してくださった。
「うわ!素敵なお部屋です。大学の教官ともなられると個室があるんですね。
ここでゼミもされるのですか?」
「ううん。大抵一人で居残って残務しているから、なんだか落ち着かなくて寂しいのよ。
それに、食堂へも行かないの。だって大勢のなかでたった一人で食事するのは孤独よ。」
「先生、まさにそれがかんもく症の人の姿です。」
「あなたが送ってくださったシンポジウムの案内拝見しました。
ああ、そうだわと思って、私の文献も改めて調べなおしてみたの。
よく送ってくださいました。こうして知らせてもらわないと気づかずに忘れてしまっていたことを
思い出したんです。」
「先生、ありがとうございます。」

K先生は、昨年までは地元で養護学校(特別支援学校)で長年、障害児教育に従事してこられた。
学校心理士として、保健室登校や不登校生徒の相談も歴任され、現在は養護教諭(保健室の先生)を目指す学生を指導していらっしゃる。
私が授産施設でバーンアウトした経緯にも熱心に傾聴してくださり、労ってくださった。
「聞いているだけで、昨日までの日々がどんなに大変だったでしょう。養護学校では1対1対応の重度障害の方を一度に3人も担当するなんて無謀ですね。しかも、クリーニング業務を行っている
他の班と反目しあっていたというのも、頷けます。養護学校でも同じようなことがありますね。
重度の方の支援はやったことがなければわからないわね。」

続いてかんもく症のことについても懇切なコメントをいただいた。
「私も実は、相談センターに勤務していたときにかんもく症の方にお会いしたことがありました。
彼らは、知的障害や発達障害でなくても、明らかに特別支援の対象です。私が若い頃には、教職員は知っていたと思うし、研修のテーマにも掲げられていた時代がありました。だけど、いつの間にか次第になくなっていったのね。誰にも気づかれないうちに・・・かんもく症児がいなくなったのではなくて、
取り沙汰されなくなって忘れられていった、取りこぼされて犠牲者にさせられたということに、はっとしたんです。これはいけないことだと。」

「そうです。どうして大学院でそういってくださる先生にお会いできなかったのでしょう。臨床心理士コースの修了生にも何度もチラシを渡しました。当事者はいってみれば、存在しているのに書面からその文字を削除されて抹殺されたようなものです。だから、私が思うに、教職歴30年から40年の先生の世代の方々とそれ以降の教職員の方々の間にかんもく症についての知識の有無にギャップがあったと思います。」

「特別支援教育というのは、私は教育の基盤だと思っています。だから一人一人の困った問題に対応する教育の対象として、学会が緘黙症に注目したのは画期的なことだったんでしょう。学会の専門誌上に緘黙症の文言が載るということだけでも、今後は全然違ってくるはずです。そして、保健室の養護教諭は必ず備えておかなければいけないことですね。かんもく症だけでなく目の前のどんな問題を持った子どもに対しても適切な対応が必要です。ところが今は発達障害や自閉症だけが当事者が増えたので、それだけが特別支援の対象だと勘違いして大騒ぎしているけど、少なくても他の障害もあるってことを軽視しているのね。他にも、チックとか一般に知られていない障害はたくさんあるけど、知らなくていいということではないわね。」

「先生、ありがとうございます。報告させていただいても構いませんか?」
「いいですよ。あなたの知り合いに養護教諭を目指したい人がいたら紹介してください。」

記憶は変容し、やがて埋没して再生・再認不可能となる。
おんきせがましいと言われても、私は恐る恐る記録する。
そして、場当たり的な下手なやり方でもソーンダイクの猫みたいに、試行錯誤すればヒットすることがある。

注目されずにこっそりと、でも、ありのまま自由気ままに綴るのがゆきんこ流。

忘れたい古く遠いココロの瘡蓋は書かなくても、いつでも何度でもリピートして涙ぐむことができる。
でも、忘れたくない今、忘れてはならないことばは、明記しておきたいのだ。
忘れられない数々の刃物につきつけられたような台詞に積み重なって頭にこびりつき、悲しい記憶になったとしても。

さて、ここで深呼吸したら脈拍変わってリラックスするかもね。
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深呼吸して、しばらくのんびりしてみれば?
遠くから心配しても心配しきれないよ。

がんばるのをやめる事も時には必要でしょ?
2008/09/01 21:14 | URL | 小林 一弘 [ 編集 ]

・・・ですよね?

嬉しいことに小林さんはじめ、数名の方々
から同じことばをいただきました。
ありがとうございます。
2008/09/02 11:57 | URL | ゆきんこ [ 編集 ]

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/09/07 15:53 | | [ 編集 ]









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プロフィール

ゆきんこ

  • Author:ゆきんこ
  • 2005年8月23日にデビューして、ブログ歴12年目になりました。
    開設当初、障碍児加配保育士を経て、紆余曲折の3年間の夜間大学院の日々を綴ってきました。
    修了後も、失業と再就職を繰り返し、どうにかケセラセラでやってきました。
    出会いと別れの中で次第に専門分野への執着を捨て、遠ざかる日々です。

    独身時代の趣味は、旅行、水彩画、ハイキング、心理学系の読書、リコーダー演奏などでしたが、兼業主婦になってからは家事にまい進、心身とともに衰退しています。
    かなり前に流行った「どうぶつ占い」では「人気者のゾウ」ってことになってます。

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