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心理学的ユートピア

昨日は、9月下旬に取り寄せていた2冊の図書の返却日だった。
気温は27℃と再び9月中旬並みの汗ばむ陽気だった。
正午前には自宅を出て、市街地の図書館へ出向いた。
隣接する総合福祉会館の福祉図書コーナーはいつも閑散としていて集中して読書するにはもってこいの環境だ。

そこで、ソファに腰掛け一気に読み終えることにした。
本のタイトルは
『森の生活 WALDEN TWO 心理学的ユートピア』 by B.F.Skinner(1948)
もう60年前(昭和23年)に著された作品だというのに、今のマイブームはなぜだかスキナー博士なのでとても新鮮な気持ちで読めた。

もくじは以下のとおり

  序   古武 弥正(関西学院大学心理学研究室にて)
1.戦後のある日                  1
2.第二ウォールデンへ             10
3.雨のない街                  17
4.お茶をのみながら              26
5.衣装談義                   32
6.雑踏を避けて                 39
7.食生活                     45
8.労働クレジット                 50
9.お客様の作業                 67
10.作業場見学                 75
11.芸術について                85
12.保育室で                   96
13.感情論                    102
14.教育論(感情教育)             106
15.教育論(知育教育)             120
16.恋愛論                    133
17.家の問題                   143
18.迷い                      154
19.過去の共同社会に対する批判      159
20.道徳論                    163
21.心の分析                   187
22.医療施設                   192
23.ユートピア論(宗教・政治論)        199
24.宣伝                       213
25.横断的観察                   220
26.縦断的観察                   226
27.第二ウォールデンの分胞(指導者の原理) 231
28.告白                       253
29.非難と弁明(自由論・民主主義論)     263
30.幕間                       291
31.車のきしみ                   294
32.回顧と展望                   298
33.神学                       309
35.心のあらし                   319
36.帰郷                       332
解題(訳者付記)                   337
あとがき            宇津木 保 うつきただし

非常に盛りたくさんな1冊で、もう1冊借りていた『マインドフルネス&アクセプタンス』(2005 ブレーン出版)は全く読む時間がなかった。
ウォールデン・ツーのような古典的図書は、日本国内でわざわざ神奈川県立図書館から取り寄せたくらい稀少価値の高い著作だから、もう2度と読むことはできないだろうと、できるだけ丹念に読んでみた。

私の頭ではとてもついていかない果てしない内容だ。多分、あと3回くらい読んでも真髄はわからないだろう。
それでも、行動分析学の始祖であるスキナー博士に敬愛をこめて、拙いながらも自分のわかる範囲でコメントしておきたい。

解題から引用してあらすじを述べると

原著はスキナーが夏期休暇を利用して一気に書き上げたそうである。
1965年には8版を重ね、当時の経営者のための再教育セミナーのテキストに活用された。
人間工学あるいは人間の行動科学について原理的な結論に達したフレイジアという男が、その原理にしたがって想像した心理学的ユートピア「ウォールデン・ツー」を心理学教授のバリス、哲学教授の
キャッスル、戦争から帰還したばかりの2名の若者ロジャースとスティーブ、彼らの女友達バーバラとメアリーの合計6名で、数日間にわたって見学した時の描写を中心とした物語(フィクション)である。
登場人物中のフレイジアとバリスは、スキナーの分身的人物とみられる。
その内容は、もくじにも示されたとおり、社会生活の広範囲にわたって理想社会のさまざまな問題にふれ、常識的あるいは哲学的批判に対する、心理学的あるいは行動科学的見地からの主張や弁明がある。そして、積極的強化の原理に基づく理想社会の現代における可能性を徹底的に追及してみせる。第二ウォールデンを成立させる基本的原理は「強化」の原理である。
この概説から 「科学と人間行動」とも重なり、日本の行動分析学の心理学者たちにも確実にスキナー博士の心理学的ユートピアの構想が受け継がれているのだろうと頷ける。

さらに、私が印象に残った箇所を抜粋してみたい。
目下、失業中、生まれてこの方低所得の私にとって「労働クレジット」は嬉しいシステムだ。

全ての老若男女に「失業」という概念がない。そして労働の対価となる貨幣が存在しない。知性や能力の差異に応じて好きなときに好きなだけ好きな労働をすれば、規定された単位のクレジットに換算される。今の日本では家事・育児・介護などの女性が不当に請け負わされてきたアンペイドワークや福祉におけるボランティアは、無償の奉仕のままである。しかし、心理学的理想郷では、全ての労働とみなされる行動をクレジットに換算して、日常生活の衣食住の必需品も貨幣を用いずに賄われる。過不足も貧富の差もないので無益な搾取もされない。経済状態の格差もないので、若者は自由に恋愛し、適齢期には相応しい男女が結婚して定数の子どもを育てることができるシステムだ。
                               
次に、心理学的ユートピアを創設したフレイジアの最も心にのこる台詞を引用したい。

「行動の科学は科学の科学なんです。それは話すことについて話し、知ることについて知るところの特殊な術なんです。さよう、そこには行動の原動力に関する面倒な問題もあります。すべての科学は、競争的文化の産物ですから、今でも大部分の科学者たちは、競争によって動かされていますし、少なくとも、科学を支えているものは競争的な人たちです。しかし、科学的な方法を用いて人間行動を研究しようとする場合には、競争心の存在は即ち自殺を意味します。生き残ろうとすれば、結局、争ってはいけないのだろうという、今までとは大分違った事実が明らかになってきます。」

「いろいろな点で、実際の第二ウォールデンの創造は近代科学の見地から見た世界の進化よりは、キリスト教的宇宙観の精神に酷似しているのです。」

バリス  「愛とは何でしょうか?」
フレイジア「結局、積極的強化の別名じゃありませんか?」
バリス  「あるいは、その逆ですかね」
フレイジア「人間と犬との協同作業は、人間や動物を奴隷扱いすることとはえらい違います。」
バリス  「一体、いつになったら、人間社会も奴隷的社会としてではなく、協同的社会として分類されるようになるのでしょう」

この本を読み終えたのは、2時過ぎだった。
3時には帰宅して裏のWさんとお茶しながら英語の話をする約束をしていた。

福祉図書コーナーの一角のテーブルで気に入った台詞を書き出し、3冊の書籍を借り出した。
そして、カウンターの聴覚障害のある女性スタッフに印刷室の場所を尋ねた。
持参のおにぎりをほおばって一休み。帰宅時刻まであと30分。
見開きのスキナー博士の肖像写真のコピーをとった。
総合福祉施設から市立図書館へ移動し、2冊を返却して帰路に着いた。

不思議なことに、ABAを知った日から4年目に入っても興味津々ドーパミン放出性格は未だに維持されているらしい。
失業中にもかかわらず、バッテリーを付け忘れた電動自転車のペダルをなぜか軽快に踏みしめていた。

単純な「刺激と反応」の縮図に被れている私って、やっぱり脳天気なのかしら?
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Comment

tom jerry #4ARdecsc

私は、躁鬱歴18年の年金生活者です。サラリーマン時代に上司と喧嘩したためか、躁鬱症に成りました。ただ、躁鬱の性格を持っていたのだけと思いますが・・・・・・ 。

以下の文章は、少し分かり辛いかと思いますが、21世紀にはパラダイムの変化が有ると思って読んで下さい。

私は、今、森林ボランティアをやっています。間伐をしたり、それを製材して総檜作りの足湯セットを作ったり、炭焼きをしたり、木質ガス化発電、獣害対策の里山整備等に携わっています。

森林ボランティアは、奉仕では無いのです。それをやる事自身が自分の楽しみなのです。だから、継続出来、楽しんでやれるのです。

日本の文化の源は森林に有ると信じています。気分の落ち込んだ時、里山や森林浴をすると心が和むのは、日本人の中に森林の文化のDNA が息づいているからだと思います。

日本の国土面積の70%強は、山林です。しかも、日本の山林は緑に満ち溢れています。それほど森林の恵みに満ち溢れた国は他にありますか?

日本の平地面積は、国土の13%位です。そこに、日本の人口の80%以上の人達が住んでいます。

日本は、世界第二のGDP(工業生産)を誇っています。GDPはあくまでも工業生産高を貨幣(金)として集計しているだけです。自分で育て、自分で食べる野菜等は GDP には反映されません。しかし、その人達はある意味で豊かです。

一方、日本の森林は多いなる潜在的な価値を秘めています。それは、工業生産とは少しおもむきを異にするものでしょう。しかし、日本が、森林の秘めた価値を享受する社会を作る事が出来れば素晴らしい豊かな社会を得る可能性を持っています。

我々は、経済をお金だけで価値判断するする事に慣れ過ぎています。水道水は(真水)は何処から来るのか、川の清流や生き物はどうして生息しているのか、キノコや土の中の微生物が我々に目に見えない恩恵を与えている事か等々・・・・・。

今の、経済統計では、それらを全く考慮していません。湯水のごとく使うと言う言葉が有りますが、そんな事が出来る国は、世界中でどれだけ有るでしょうか?日本くらいでしょう。

我々日本の自然は素晴らしい価値を持っているのです。それを利用し、共有することの重要性を今こそ見直し、それを享受することの重大性とその恵みに在り付ける事に目を覚ますべきです。

森林は再生し、循環型で我々に永遠に恵みを与える仕組みを持っています。

それを破壊するのでは無く、共生する道こそが今後の日本の豊かさを満たす大きな分かれ目なのです。

私どもは、それに気づき、森林ボランティアに参加しているのです。21世紀は、貨幣経済を捨て去り、自然と共生する事で豊かさを得る世紀だと思っています。

2008/10/07 (Tue) 23:53 | URL | 編集 | 返信
ゆきんこ #-

tom jerryさん、ありがとうございます。

tom jerryさん、コメントありがとうございました。とても嬉しかったです。こんなにたくさんお返事をいただけて、このブログを書いてよかったなと感動しました。

20世紀から21世紀の飛躍的な科学時術の躍進に伴う功罪は、正に現代日本のあらゆる「おかしな現象」に帰結するように思います。
「21世紀は貨幣経済から自然との共生に豊かさを見出す世紀」というtom jerryさんのお考えに全く同感です。

tom jerryさんのご活躍ぶりを目の当たりにできれば、もっと勇気と元気が出てきそうだなと清清しく拝読しました。
森林ボランティアという素晴らしい仕事に貢献されることで、心身の健康も自然に回復されることをお祈りしております。

そして人間関係も、人と自然の関係も喧嘩しないで仲良くしないといけませんね。大変反省しました。結局、形は違えど私たちは素粒子の塊なのですから。

2008/10/08 (Wed) 11:43 | URL | 編集 | 返信

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