芋掘りバーベキュー

思いがけないYさんのお誘いで、昨日のフェスティバルの続きに1ヶ月振りに障害者自立施設ワーク☆へ出かけた。

まずは、利用者さんとその家族総出で畑でスコップや鍬で芋掘り作業。
あの真夏の猛暑がなかったら・・・

しかし、ここで突然、こゆきさんから電話がかかってきた。
不思議とこゆきさんの電話越しの声からドンマイというオーラが発せられてきて、
社会不安などどこ吹く風という気分になってきた。

6月初旬の苗植えのバーベキューパーティーから5ヶ月経過して、
地下のサツマイモを一斉に掘り起こすと、大きなお芋が次々と顔を出した。
「どう?H君掘ってみる?」
「ううん。いい。」
Yさんだけでなく、何名かの利用者さんたちが元支援員のゆきんこに親しみをもってくれていたのか、
傍まで来てにこにこしていた。

女性の利用者の参加は来年入所予定のまだ支援学校に在籍中のNさんだけだった。
Nさんとは、夏季実習で2日間だけのつきあいだったのだけど、やはりゆきんこのことを憶えていてくれていた。

「なあ、ゆきんこさん、戻っておいでや。」
「ほんまや。戻りたいなあ~。なんでやめたんやろ・・・」
「Tさん、怒っとったで。」
「そうか。Tさん、ゆきんこが辞めるとき、お休みやったから挨拶でけへんかったもんな。
今日も休み?」
「また、熱出して休んでる。」
「お大事にねと伝えてよ。」
「うん。お大事にって言っとくわ。」

1時間以内に芋の掘り起こしと畝の整地が終わると、今度は駐車場と玄関先にバーベキューの設営とシートを敷いて食事の支度が始まった。

キャンピングテーブルを置くと、利用者さんたちは皿と箸を両手に食べるスタンバイいつでもOKという感じでテーブルを囲んで胡坐をかいた。

保護者がアルミ箔に野菜を包み、次々と炭火の網の上にのせて焼いた。
すると、Yくんが待ってましたというかんじで
「パンや、パン」
とカバンから食パンを取り出し、嬉しそうに焼き網の上にのせた。
Yくんのお母さんが恥ずかしそうに私に解説してくれた。
「前のバーベキューでゆきんこさんがパンを焼いて食べていたのがすごくうらやましかったらしいんです。」
「あれは、ウチに朝ごはんがなくて、、、、」
「今まで、バーベキューの主食はおにぎりが当たり前だったんですが、朝ごはんはトーストですから、今日はその時のことがインパクトあったらしくて、朝からここでパンを焼こうと決めていました。」
「そうですか。よく憶えていたんですね。」

瞬く間にパンは炭色にこげて、トーストを通り越してしまった。
「こんなにこげたら発がん性物質になってないかな?」
「いただきま~す」
バーベキューの炭火トーストを食べるというY君の望みは一応叶ったらしい?

知的障害者同士のテーブルというのは、あんまり会話らしい会話なんてないけど、
成年に達した彼らなりの落ち着きというか、長年のつきあいというか、
ある程度、お腹を満たしてしまっても、ただその場に座って安穏としてゆっくり時間が流れていった。
この自然なゆったりとした時間の流れを、利用者と支援者という関係ではなかなか味わうことができなかった。
なぜなら、両者は余暇を楽しむのではなく、仕事をしなければならない間柄がそうさせていた。

Kさんのお母さんによると、利用者さんたちが幼少時から恒例の年2回のバーベキューは、初夏のサツマイモの苗植えと秋の収穫に行なってきたそうだ。
この施設が今年4月オープンするまでは、付近の畑を借りて川原を会場にしていた。
施設の畑も借りることができて、施設のトイレや水道を使えるようになってとても便利になったと語ってくれた。

「Hくんとゆきんこさん、どっちが背が高い?」
「どっちかな?立って比べてみよう。」
「う~ん、同じくらいだね・・・」
「ちょっと、H君が高いかな?」
「それじゃ、HくんとMくんは?」
「う~ん、やっぱり同じくらいだ。」
「ホントだ。3人とも同じくらい。」

などと、おやつを食べ食べ仲良く背比べをしていると
Aさん親子が遅れて到着した。
しばらく、ゆきんこがどこにいるかわからなかったAさんだが、
「Aさん、こんにちは。今日も来たよ。」
すると、Aさんは嬉しそうな奇声を発し、やっぱり抱きつき行動をしてくれた。
「Aさん、お出かけしてきたから、お腹空いたね。食べたら遊ぼう。」

しかし、Aさん親子が食べ終わった頃、バーベキューは同時におひらきモードになった。
めいめいが片付け始めても、Aさんは目ざとくつまみ食い行動をしていたので、
Aさんをお父さんが阻止した。
Aさんもめげずにお父さんに抵抗し、集団に戻ろうと父娘で押し相撲のようになった。
「Aさん、わかったよ。もうおかたづけになったから、ゆきんこと散歩しよう。」
Aさんは抵抗をやめて、すんなりゆきんこと手をつないで歩き出した。
車の前に来て、お父さんがAさんを車に乗せ、ドアを閉めてロックした。
すると、Aさんはものすごい力で車内からドアや窓をドンドンと叩いた。
彼女がこの閉じ込められ行動を幾度となく経験してきたのだろうと察知した。

お父さんも様子を見てドアを開けて自分も乗り込んだ。
その隙にAさんがゆきんこを車に引き込んだ。
「Aさん、一緒に車にのせてくれてありがとう。でも、いいのかな?」
結局、Aさんに独占され、抱きしめあって車中で時間を潰した。
「A、ちょっと興奮しすぎだぞ。」
「お父さん、ごめんなさい。Aさんとゆきんこは友だちだよね。
Aさんは私にこんな感じでぬいぐるみみたいですけど、支援員のOさんにはお父さんみたいに慕っていますよ。」
「ああ、そうですか・・・」
お母さんが戻ってきて、座席を降りAさん一家と別れた。
三々五々と家族が☆を去り、施設長のY先生やYさんのお父さん、M理事に挨拶して徒歩で30分以上かかるバス停へ向かった。

もう支援員でない肩書きのない私でも、利用者さんたちが受け入れてくれたことが嬉しかった。

帰ってきてから1年ぶりにこゆきさんに電話があり、励まされた。
「遅くなってごめん。市役所の前で撮ったはがき、よかったよ。失業しても、ゆきんこさんはゆきんこさん。その施設で5ヶ月間働いたことも、どこかできっと役に立つわよ。人生に無駄なんてないわ。」


明日はTちゃんと大学祭へ出かける予定だ。
スポンサーサイト

テーマ : 今日の出来事 - ジャンル : 日記

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する