日常の当たり前の何気ないことの中に 「あっ」というささやかな発見を一緒に 味わってくれませんか? でも、もしかすると、見過ごしている当たり前でない大発見かもしれません。
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結局、墓穴を掘りました。
2010年07月18日 (日) | 編集 |
7月9日金曜日の採用面接で、
「最後に自己PRをお願いします。」
うっかり、想定質問であることを忘れていた。
「真面目で、バカがつくほど正直です。そんな天然の性質が対象となる方々の支援にピッタリだ自負しています。」

しかし、「正直者がバカを見る」
遠い過去。ブラスバンド部時代のトロンボーン奏者だった先輩の呟きがふと蘇った。
書きたくない抗えない事実は、封印しておいてもよさそうなものだ。
けれども、敢えて記録に留め、自戒し次のチャンスにつなげたい。
そういう禊(ミソギ)の作用が、誰にも読まれない自己満ブログの醍醐味かもしれない。
何てったって、私は「走れ正直者♪」だから。

面接官の所長と副所長は最後にこう告げた。
「それでは、採用時には1週間後に電話通知いたします。不採用の際は、履歴書を郵送でお返しします。」
「どうぞ、前向きにご検討ください。」
前職で5年半の履歴のある職場の機関紙を持参していたので、退出前に副所長のT氏に差し出し、一礼して面接室を出た。

それから、1週間後の16日は爽快に晴れた。
採用通知の電話はなく、翌日の昨日、宅急便で履歴書が入ってるらしいA4サイズの封筒が届いた。
これで、10ヶ月ぶりに失業者の烙印を押されたわけだ。

今週も豪雨の吹きすさぶ中、家屋を失って途方にくれる人々の悲嘆の様子が報じられた。
自然は時に、残酷だけど、そんな時、安心して任せられる人々が周囲にいるのかいないのかが、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)やら諸々の精神疾患に陥って心身の2次障害予防の要だと思う。

そして、私にも不安定な天気と共に転機が否応なく訪れた。
派遣会社というところは、人知れず誰かが採用され、また人知れず誰かが辞めていく。
その数のおびただしさに、「いつか自分の番がやってくるんじゃないか」という予期不安にいつも怯えていた。

「俺は解雇するなんて一度も言ってないぞ。」
「もうこの派遣先で働ける部署はない!」
今週、急に柔和な態度に出ては、この台詞を私に繰り返していた。
遡ること、13日(火)の退勤後、自宅の電話のベルが鳴った。
「新しい派遣先が決まったから、明日、早々にそちらの上司と面接するように。Kさんという人だ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「明日10時、スーツで行くようにね。」

それから小雨が降りだしたものの、ブラウスを洗濯した。
前夜にHPで新しい派遣先の状況をチェックして、準備も整えた。

翌朝、いつもの出勤時間よりも余裕で出発した。
しかし、なぜだかわからない不安な気持ちが、雨足と共に次第に大きくなっていった。
JRの最寄駅のホームに立つと、豪雨のため、5分以上の遅延運転をしている旨の断りのアナウンスが流れた。
なぜだかわからない不安のひとつには、まだ来ていない採用結果に一縷の望みがあったからだ。

自宅からちょうど1時間くらいで通勤できそうな新しい派遣先もまた、駅前に聳え立つ巨大な有名な建物だった。
それに、今までの派遣先よりもスタッフもグレードアップしていて、歴史も古く事業内容も充実していた。
HPを覘いた瞬間から、実のところ怖気ついていたのも確かだった。

「そちらの対象者の人数はどれくらいでしたか?」
「私の配属部署で600人くらいで、総数では2000人くらいでした。」
「こちらもそれくらいだね。でも、紹介の無い方からいただく手数料はこちらが7000円以上ともっと高いのに、それでも、是非にという方は断っていないんです。」
「そんなに人気あるのですね。」
「この派遣先で大変なのは、臨機応変さと細々した不文律がややこしいと聞いています。それと、見ての通り立ち仕事です。見た目よりかなりハードですよ。」
「はあ・・・」

K氏は制服の女性たちの仕事ぶりを観察させてから、事業内容や業務内容の概要を説明し、最後に休憩室に案内してくれた。
建物の様子を一望し、喫茶店風の丸テーブルに着席するころにはすっかり拒絶反応を起こしていた。
ここから、またしばらくもぐら叩きの日々が押し寄せる・・・

「それで、どうですか?ここで新しい気持ちで勤務できそうですか?」
「それが、、、やりたい気持ちが55%、無理だという気持ちが45%です。」
「は!? あんたの返事、理解に苦しむなあ。」
K氏は私のしどろもどろの心境を聞くに連れてどんどん不機嫌になっていった。
「私は保育士だった時から腰を痛めていて延々と立ち仕事はできません。業務内容もこれまでより複雑で難しそうです。それに、何もこんな大きくて有名なところでなくても・・・」
「自分から悪宣伝してマイナスのことばかり言ってどうするんだ?あんたの前の業務報告はちゃんと聞いていてそれでここを紹介したんだぞ。俺はそんな話をするためにこの面談をしてるんじゃないんだ。誰にでもミスや失敗はある。それをリセットして気持ちを切り替え、この新しい派遣先でゼロからやり直す気持ちがあるのかどうかと聞いているんだ!!」
「・・・無理です。また同じ失敗をすれば本当に申し訳できなくなります。」
「それじゃあ、雨の中のこのこやってきて、時間の無駄じゃないか。電話で断ればいいものを!あんたの気持ちわかんないよ!」

表玄関から、帰路に向かうと雨量は更に増していた。
K氏に苦虫をつぶしたような面持ちで見送られたのだか、咄嗟の防衛本能で、「NO」と言ったことに悔いはなかった。
たとえ、不承不承受けたとしてもいずれ辞める日がくるだろうという予測は同じだと思えたからだ。

今度は配属先の上司S氏との最後の面談がやってきた。
「雨の中ご苦労サン。」
「結構、雨がきつくて電車も遅れて運行してました。」
「断ったって、どうして?ただ一言『がんばります』と言えばフルタイムで働けたんだぞ。」
「2度あることは3度ある。また取り返しのつかないミスをして報道沙汰になったら申し訳が立たないと。」
「そんなに深刻に受け止めたんだな。」
「それと、この1ヶ月自分の適性を考え直していました。Sさんが面談で何度も『他の仕事に考え直したらどうや』と言われたし、指導係のFさんにも求人応募したらと唆されていたし、もう働かせてもらえないと焦っていました。その頃、相談に乗ってくださった方たちから求人応募の話がありそれで気持ちも揺らいでいました。」
「で、もう不採用になったから、ここでがんばり直すって話じゃなかったのか?」
「前回の面談のときはそうでした。でも翌日、また求人があって、実はひとつ採否を待っています。
結果はわからないけど、もし採用されたらやっぱりKさんに迷惑をかけてしまうと。」
「そういうことか。」
「初めは、前の上司の配慮で今の部署に異動させてもらったから、どんなことがあっても研修中の札が取れるまでがんばろうと思ってました。でも、Sさんの面談が辛くなって辞めさせられるんじゃないかと益々不安が募りました。毎日が不安と焦りでミスが重なりました。Sさんからも自分の適性を考え直せと言われたし、自分の履歴は事務よりも保育士や福祉の方が長かったので偶然、その求人を応募するチャンスが先月から舞い込んでいました。」
「それで、これからどうするの?新しい派遣先を断るってそういうことだろ?自分に合った仕事を探していて、見つかるまでの間だけここに置いてちょうだいっていうの?それは、ムシがよすぎるんじゃないの?こっちから解雇はできないけど、この会社で働く気がない人間の面倒を見るほど甘くないよ。な?」
「・・・・」
「退職届持ってきて」
「どうして、こんなことに・・・私辞めたいわけじゃないのに。」
記録・補佐役のMさんが、一時退席して簡便な「退職届」を即座に用意した。

「本当にいいのか?」
といいながら、どうして笑顔なんだ、S氏?
こんな辞めさせ方、数え切れないほど、お手のものなんだろう?
所詮、派遣会社はミスの多い不都合な社員を切り捨てるなんて当たり前。
時代が江戸末期に比べたら、そして、業界は命最優先だから、実質抹殺されずに済んでいるだけ。
「昨日電話に出たの、お母さん?」
「転居前の実家に電話されたそうですね。先日、事故に遭って後ろから追突されたんです。きっと耳が遠くて気づかなかったんだと思います。」
「ええ、それは災難だったな。」
「幸い、骨折も無く示談で済みました。」
「大事にしてあげてよ。」
「はい。」
「それじゃ、ここに『一身上の都合』って書いて」
「・・・・せめて1年はがんばりたかったです。毎日が不安でした。こんなに毎日叱られて、もぐら叩きのようでした。対人といっても、支援するかかわりとクレーム対応ではまるで違いました。」
「そうだな。福祉の仕事とは対応が違うもんな。」
「どんどん入れ替わり立ち代りする職場であるのも気がかりでした。」
「そうか。でも、それを気にするのかどうかは、自分次第だろう!?」
留めの一言も抜かりないS氏。
一体、何回泣いたかしれないが、最後もやっぱり、涙で目が滲んだ。

最後に、一緒に働かせてくれた部署のメンバー2名に挨拶した。
「たった今、退職届を出しました。ご迷惑かけるばかりで、お世話になりました。」
黒スーツ姿で佇む私に、二人とも無言で悲しげな表情をして見送ってくれた。
度重なる私の面談(拷問?)の様子に、
「私が部署異動を命じられたらその時は辞めるわ!」
「結婚して辞めたいけど、他の人が穴埋めに入ってくれないと・・・」
とぼやいていたからだ。

私には意気消沈しても、即座に、宥めてくれる親しい人たちが確かにいる。
「勤務先、ちょっと遠いよね。」
「よくがんばったよ。」

しかし、割合は減っているけど、世の中には、「失業者」などとは無自覚に安穏と暮らす身分の人たちもいる。
その場合は、お金や暮らしの心配がない立場にあるだろう。
そんな嵐が去った後の3連休。
私の涙や腰痛もストレスも止んで、入道雲の向こうには、青空が広がっている。

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2010/07/18 12:25 | 悶々 | Comment (0) Trackback (0) | Top▲
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