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幼児の記憶


8月も今日で終わり。水面から顔を出すカレンダーの
バンドウイルカくんとも今日でお別れだ。

朝はタオルケットを肌蹴ていると
クーラーなしでもひんやりという感じ。
起きて室温をみると26℃だった。
3歳児クラスのアルバイトの常駐の先生が熱のため
お休みで、ピンチヒッターでお手伝いに入った。
いつも代打っていうのも、本当のところは
プレッシャーだ。雇い主はアルバイトを本当に
都合よく使い捨てているのに呆れて、
口角が下がってしまう。

目の前の子どもたちがけんかしたり、
なついてきたりと、なんやかやの諸々の行動をすると
時給が安いからといって目を離して知らん顔するわけにもいかない。
そこが目に見えて評価されにくい保育士の辛いところだ。


以前、1度同じような状況で7月の初めごろに半日
一緒に過ごしただけだったのだが、子どもたちの
何人かは、「ゆきんこせんせい」と近寄ってきた。
「あれ、先生の名前、知ってたの。嬉しいな」
「せんせい、からいの食べて」
「せんせい、あっちの露天風呂入りや」
「ありがとう。みんな親切やな。」


お片づけの時間になっても、夢中で砂のお料理を
しているココロちゃんに、年配の非常勤の保育士が
「もう、何回言うからわかるの!」と
彼女の両手からお皿とスプーンを取り上げた。
こんな些細なシーンもわたしには、恐いな~と
思えてしまう。

1時の午睡の時間、加配のT先生に追われて
遊戯室に駆け込んできた5歳のRくんが、わたしに抱きつきにきた。
「先生、お願いします。」
「じゃあ、Rくん。ゆきんこせんせいとねましょう。
何分に眠ったか、起きたら教えてあげます。」
Rくんは、安心したのか納得したのか、
わたしが添い寝してトントンすると20分ほどで寝息を立てた。

師匠(といってもWEBから出ない間柄で、しかも一方通行)
のABAの法則に則って目下試行錯誤のわたしだが、
「問題がある」と思われがちな子どもほど、冷静沈着、
穏やかで寛容な態度でかかわることが鉄則という
自負心は、こうしたささいな積み重ねで確実になってきた。
他のどの保育士にも決してほめられなくても。



「今日は、セミの鳴き声聞いた?」
「ううん。」
「じゃあ、これからは秋の虫探しだね。
 せんせいの家ではリーンリーンって鳴いてるよ」
「わかった。鈴虫だ。俺の家でも鳴いてる」

帰り道、いつもの綺麗な舗装された歩行者通路の脇に
細い街道を見つけた!この町のロケーションは知り尽くしている
つもりでも、未知の通路を見つけると新鮮で得した気持ちになった。
わたしの方が名前を覚えきれない何人もの子どもたちが
「ゆきんこせんせい」と呼びかけてくれたことが
何よりの今日のご褒美だった。
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